【1月5日 AFP】ミャンマー東部カヤ(Kayah)州では、看護師が軍事政権の目を逃れて仮設の診療所を運営し、検問所で見つからないようにひそかに持ち込んだ薬で新型コロナウイルスの感染者や民主派の戦闘員の治療を行っている。

 現地の監視団体によると、看護師たちは荷物をまとめ、いつでも逃げられるようにしている。昨年2月の国軍のクーデターと、1300人以上が死亡した弾圧に対する不服従運動では、医療従事者はいつしか最前線に立たされるようになっていた。

 人権団体の報告によれば、政府系機関でのストライキにより多くの病院で職員が職場を離れ、抗議活動を続ける医療従事者は国軍に逮捕・殺害された。

 エイ・ナイン(Aye Naing)さん(仮名)は、クーデター直後に公立病院を辞め、昨年6月、軍事政権と反クーデター武装組織との衝突が相次ぐカヤ州でボランティアを始めた。

「戦闘が始まると、私たちは森に逃げて隠れなければなりません」。デモソ(Demoso)近郊の仮設診療所でエイ・ナインさんはAFPに語った。戦闘で使われなくなった学校を利用している。

 患者のほとんどは避難民と、民主派が創設した独自部隊「国民防衛隊(PDF)」のメンバーだ。

「この地域には医師や医療従事者が少なく、村で必要とされていると聞きました」とエイ・ナインさんは言う。「だから、ここに来ることにしたのです。それから医薬品を手に入れるために力を尽くしました」

 新型ウイルスの検査で陽性反応が出た人には、解熱剤のパラセタモールやビタミン剤を処方している。手元にある薬剤はこれだけだ。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)の最近の報告によると、軍事政権への反発が強い地域では、軍が人道支援や医療物資の輸送を妨害している。

「検問を通る際に全員、軍に調べられ、薬を持っているのが見つかれば逮捕されます」と、同じ仮設診療所で働いている看護師のラ・アウン(Hla Aung)さん(仮名)は話した。

「私たちも、まさに命懸けです」 (c)AFP