【12月28日 AFP】昆虫の研究や、環境保護を声高に訴えたことから「ダーウィンの後継者」と称された米生物学者のエドワード・O・ウィルソン(Edward O. Wilson)氏が26日、マサチューセッツ州で死去した。92歳。E・O・ウィルソン生物多様性財団(E.O. Wilson Biodiversity Foundation)が27日、発表した。

 ウィルソン氏は米ハーバード大学(Harvard University)の研究教授を長年務め、アリとその行動に関する世界的権威とされていた。後年は昆虫だけでなく、鳥類や哺乳類、人間の社会的行動を研究し、社会生物学を新たな科学分野として確立した。

 数百本の科学論文のほか、30冊以上の著作を残し、1978年の「人間の本性について(On Human Nature)」と90年の「アリ(The Ants)」でピュリツァー賞(Pulitzer Prize)ノンフィクション部門を受賞した。

 その先駆的な研究は物議も醸した。1975年の著作「社会生物学(Sociobiology)」は、動物の行動に関する論説が学界で高い評価を得たが、最終章では人間の行動は大部分が遺伝的なものであり、男女間の分業や部族主義、男性優位、親子の絆などの傾向は生まれつきの素質として獲得されると論じて、批判を浴びた。だが、それでも自然科学の権威としての名声は揺らぐことがなかった。(c)AFP