【12月31日 AFP】東京五輪は、新型コロナウイルス流行下の大会として歴史にその名をとどめるだろうが、選手の心の健康(メンタルヘルス)が前面に出た大会でもあった。

 東京五輪の期間中、米国女子体操のスター、シモーネ・バイルス(Simone Biles)が精神的に苦しんでいることが大きな話題となり、英国競泳のエース、アダム・ピーティ(Adam Peaty)は1か月休養して精神的なリフレッシュを図ると発表した。

 五輪で4個の金を含む通算7個のメダルを獲得しているバイルスは、心身のバランスを崩し、出場予定の6種目のうち5種目を棄権・欠場。この決定は称賛と批判を浴びた。バイルスは、「自分の心と体の健康は、今まで獲得できたすべてのメダルより大切だ」と語っている。

 東京大会で金2個と銀1個を獲得したピーティは、バイルスの状態に言及しつつ、メンタルヘルスを考慮して休養を取ると発表。ツイッター(Twitter)に「これは普通の仕事じゃない。すさまじいプレッシャーがある。お金で幸せは買えない」「休養するのは、覚えている限り常に非常に厳しい日々を過ごしてきたからだ。この7年間、休暇を取れたのは平均で年に2週間だった」と投稿した。

 今大会で5個の金メダルを獲得した米競泳のケーレブ・ドレッセル(Caeleb Dressel)は、五輪では「恐ろしい」プレッシャーと期待を背負わされると打ち明けた。

「毎朝起きて最初に口をつく言葉は『おお、すごくわくわくする』ではなかった。時々、『今日は最悪だろうな』だった」

「五輪は特別だ。今はそれを認め、自分を偽るのをやめる」

「一つの瞬間にとてつもないプレッシャーがかかる。20秒や40秒ほど後に来る瞬間に人生のすべてが集中する。これって、とてもクレージーじゃないか」

 心の健康にこだわるのは弱いからだという見方のため、最近までこの話題は表面化しなかった。アスリートが直面するプレッシャーへの理解が進む現在でも、ピーティの発言には否定的な反応がある。