練り人形に「命」を吹き込んで半世紀 中国四川省の74歳職人
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【12月30日 東方新報】「さあ皆さん、今日は名人と一緒にカエルの人形を作りましょう」
12月上旬、中国西部の四川省(Sichuan)西充県(Xichong)の中学校。教師の紹介を受け、「面人(練り粉で作る人形)」作りの職人、張雄志(Zhang Xiongzhi)さん(74)が生徒の前で腕前を披露した。指先をてきぱきと動かし、簡単な道具を使うと練り粉があっという間にカエルの姿に変わる。無から有が生まれる姿に、教室内に歓声が上がった。
漢朝の時代から続く伝統文化の面人。張さんとの出合いは1970年代にさかのぼる。26歳の若者だった張さんは陝西省(Shaanxi)西安市(Xi’an)の街頭で、屋台で面人を作るベテラン職人の技にひきつけられた。子どもの頃から民芸品が好きだった張さんは弟子入りを志望。最初は断られたが、半月ほど屋台に通い勝手に手伝いを続けると、感心した師匠に弟子入りを認められた。その後、師匠とともに西安市や甘粛省(Gansu)蘭州市(Lanzhou)、湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)など各地を回った。「昼は師匠の一挙手一投足を注意深く観察し、夜にわずかな明かりの下で練習を繰り返した。『人形作りとは、己との闘いだ』と自分に言い聞かせました」と振り返る。
独立して故郷の四川省に戻った後は省内各地で人形作りを続けた。庶民に人気のある「三国志」の関羽(Guan Yu)や張飛(Zhang Fei)から、子どもに人気の最新の中国アニメキャラなど、生き生きとしたカラフルな人形を数多く手がけてきた。
「面人作りに必要なのは造形の技術だけでなく、キャラクターの魅力を知ること。『三国志』や『水滸伝』の小説を読み込んだり、孫と一緒にアニメを見たりして登場人物の風貌や性格を感じ取り、面人に『命』を吹き込むようにしています」
小麦粉やもち米を練って作る人形は、時間がたつとひび割れやカビが発生しやすい。張さんは小麦粉ともち米の割合を変え、防腐剤やベビーパウダーを少し加えるなど、研究を重ねた。その結果、7~8年はひび割れや色あせることがない面人を作れるようになった。
「面人の張職人」と親しまれるようになった張さんは2020年、その技が西充県の無形文化財に登録された。同年からは県内の幼稚園や小中学校を巡回し、弟子の羅栄華(Luo Ronghua)さんと一緒に面人作りを教えている。張さんにはこれまで5、6人が弟子入りしたが、活動を続けているのは羅さんだけだ。後継者として期待する張さんは「将来が楽しみな『苗木』です」と目を細める。
「生計を立てるための面人作りが今では無形文化財に認められた。伝統文化として後世に継承していきたいですね」。張さんは今日も小さな人形に「命」を吹き込んでいる。(c)東方新報/AFPBB News