中国で「スタバ神話」の危機 期限切れ材料使用が発覚
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【12月30日 東方新報】米大手コーヒーチェーンのスターバックス(Starbucks)が中国で逆風にさらされている。江蘇省(Jiangsu)無錫市(Wuxi)の店舗で期限切れの材料を使っていたことが発覚。中国にコーヒー文化をもたらし、インテリ層や若者に絶大な人気を誇っている「スタバ神話」が凋落(ちょうらく)することになるのか。
中国メディア「新京報(Beijing News)」は12月13日、無錫市内のスタバ2店舗が賞味期限の過ぎたチョコレートシロップや抹茶シロップを使って飲み物を作り、当日に廃棄する決まりの売れ残りパンを翌日も販売していたと報道。新京報の記者が10月末から11月中旬まで従業員として勤務し、店舗内の違反行為や店員とのやりとりをビデオで隠し撮りした。店員がキッチン用ふきんでごみ箱をふき、簡単に洗って再利用している様子も撮影。賞味期限を記したラベルの張り替えなど、組織的な不正が行われていると報じた。
無錫市の市場監督監理局はすぐに2店舗の休業を指示。市内にある他のスタバ82店舗を緊急調査したところ、スタッフが作業用帽子を着用していない、作業エリアの物品が乱雑に置かれている、消毒記録が不完全など15点の問題を発見した。北京や上海など他の都市でも緊急調査を実施している。一方のスターバックスは報道後、2店舗の違反行為を認めて謝罪し、中国国内すべての5000以上の店舗で点検と従業員教育を実施すると声明を出した。
スタバは1999年に北京に中国第1号店をオープン。当初は「お茶の国」中国でコーヒー文化がなかなか浸透せず、その道のりは順調ではなかった。2007年には中国のシンボルである北京・故宮(紫禁城、Forbidden City)内にあるスタバ店舗が、中国の有名テレビキャスターから「中国文化をふみにじっている」と「口撃」を受け、撤退を余儀なくされた。それでも都市部の一等地やオフィス街に店舗を増やし、ホワイトカラー層や海外文化に敏感なインテリ層、若者を中心に支持を広げていった。
近年は中国の消費社会が成長し、スタバの人気は急上昇を遂げた。スタバでコーヒーを飲みながらマックのパソコンを開くといった「イケてる」自分の姿を撮影し、中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」で友人に送ることが流行。若者の間では「自分の街にはスタバが○店ある」ということが「街の品格」を示す指標となっている。
そこに降ってわいた今回の騒動。中国でスタバのコーヒーは30~40元(約538~718円)台で、中国ブランドのコーヒーチェーンより倍ぐらい高い値段についても「平均物価を考えれば中国のスタバは世界一高い」とインターネットで批判が浮上。「スタバ崇拝の客たちは、いつまでIQ税(知識不足による『お勉強代』の意味)を払っているのか」という声もある一方、「今回の問題は特定の店舗で起きたことであり、スタバが世界中で人気があるのには理由がある」という擁護論もある。
ここ数年、中国のコーヒーチェーンも急成長している。設立から4年足らずの瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー、Luckin coffee)は今年上半期で5239店舗に達し、スタバの店舗数を上回った。Manner Coffee、M Stand、Seesawなどの新興ブランドも次々と急拡大している。企業リサーチ会社の艾媒諮詢(iiMedia Research)は、中国のコーヒー市場は2021年に3817億元(約6兆8577億円)に達し、2025年には1兆元(約17兆9661億円)に発展すると見込む。スタバにとっても中国は米国以外で最も店舗数が多い重要な市場。世界で最もスタバが多い都市は上海市の約900店だ。今回のスタバ騒動が長期化するかどうかで、中国のコーヒー戦国地図は大きく変化する可能性がある。(c)東方新報/AFPBB News