■爵位をウェブサイトで販売

 シーランドの運営は、爵位をウェブサイトで販売した利益で維持されている。29.99ポンド(約4600円)を払えばシーランドの「貴族」、499.99ポンド(約7万7000円)で「侯爵」になれる。

「今のシーランドを維持するには十分。相当売れています」とリアム氏は明かした。

 シーランドは英国の税金を払っていない。信仰、表現、あらゆる指向について、「何でもありの自由」を重視しているとリアム氏は話す。

 ベイツ家の人々は訪問するだけで、リアム氏が日常業務を担当し、兄ジェームズ(James Bates)氏はここを拠点に家業の貝の採取・加工業を営んでいる。

 施設の維持を2週間ごとに交代で担っているのは2人。エンジニアのジョー・ハミル(Joe Hamill)氏(58)と、「国土安全保障相」のマイケル・バーリントン(Michael Barrington)氏(66)だ。

 2012年には老朽化したディーゼル発電機から火災が広がり、壊滅的な被害が出た。現在は風力発電機とソーラーパネルが導入されている。

 コンクリートタワーの内部には、さまざまな宗教に対応した礼拝室、ビリヤード台とジム用具がそろった娯楽室、ホワイトボードを備えた会議室などがある。いくつかの部屋は喫水線より低く、波が絶え間なく打ち付ける音が聞こえてくる。

 大戦当時を示すものは、ポンプに関する表示を除いてほとんど残っていない。

 リアム氏によると、2000年代初頭、米国の起業家がコンクリートタワーの中に「データヘイブン(当局の干渉を受けないデータ保管所)」を設置しようとした際に大半の備品が取り外された。「ドットコム・バブルの犠牲」になった形だが、その時のサーバーは「国家の歴史の一部として」残してあるという。