【12月25日 東方新報】中国で3億人が乗っている「国民の足」電動自転車で、不正改造が横行している。時速70キロで走る電動自転車もあり、専門家は法律の規制強化を呼びかけている。

 中国の電動自転車はペダルがついているが、日本の電動アシスト自転車のようにペダルを回す必要はなく、実質は電動バイクだ。免許は不要で16歳以上なら誰でも乗ることができ、ほとんどの人がヘルメットを着用していない。

 2019年に電動自転車の国家基準改訂版が施行され、最高時速は25キロ、バッテリーを含む車両総重量は55キロ以内、モーター定格出力は400ワット以内、バッテリー電圧は48ボルト以内と定められた。各地で移行期間が設定され、北京市では今年10月31日から基準を満たさない電動自転車の走行を禁止。しかし、各地では相変わらず基準を超えた電動自転車が走っているのが実態だ。一部の電動自転車販売店は非公式に改造を請け負っており、インターネットではリミッター解除装置や電圧の高いバッテリーが販売されている。

 改造した電動自転車の中には時速70キロの走行も可能なものもあり、検査をすり抜けるため速度に関係なくメーターは25キロまでしか表示されないようにしている。また、見た目をバイクのように装飾し、電動自転車と分からないようにするドライバーもいる。

 不正改造を求める多くは、食事のデリバリーや宅配便の配達員たちだ。彼らは配達事業者から「○○分以内に配達」と指示を受け、時間を超えると罰金を取られる。配達時間は最短ルートを割り出すナビシステムによりギリギリの設定をされることが多く、渋滞に遭ったり少しでも道を間違えたりするとタイムオーバーになる。生活のかかった配達員たちは路地裏を猛スピードで走っていく。電動自転車が原因となった死亡事故は、地域でばらつきがあるが全体の20~40%を占めるという統計もある。ほぼ無音の高速の電動自転車が「走る凶器」となっている。

 火災の問題も深刻だ。2020年8月には、江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の高層住宅の一室に持ち込んでいた電動自転車から火災が発生し、階上の住人3人が死亡。速度を上げるため改造していたバッテリーから発火していた。安全生産や災害管理を管轄する応急管理省によると、今年1~9月に全国で報告された電動自転車の火災は1万件に。約8割がバッテリーの充電中に発生しており、改造バッテリーも多く含まれているとみられる。

 こうした事態を受け、北京市や浙江省(Zhejiang)、貴州省(Guizhou)など各地で電動自転車の改造を禁止する条例を制定している。北京市弁護士協会交通管理・運輸法律専業委員会の黄海波(Huang Haibo)主任は「道路交通安全法に電動自転車の改造を禁止する条項を追加し、罰則を強化すべきだ」と主張。また、「配達員が不正改造をして速度を上げようとする考えを排除するため、事業者は柔軟な配達システムを検討する必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News