■ギリシャ神話描いた石棺を豚の餌箱に

 スタリコストラッツ周辺の住民は何世紀にもわたり、周囲で出土する古代のれんがやモザイクのタイルなどを日用品として利用してきた。

 ニコリッチ氏は、近隣の村に古代の石棺を豚の餌箱として使っていた農民がいたとする、19世紀の歴史学者の話に触れた。

 ギリシャ神話の英雄イアソン(Jason)と金の羊毛皮(Golden Fleece)の物語をモチーフにしたこの石棺も、今は博物館に収蔵されているという。

 考古学者によると、ビミナツィウムはかつてローマ帝国の属州モエシア(Moesia)の州都として栄え、最盛期の人口は約3万人に上った。

 この地域ではこれまでに数万点の遺物が出土している。床と壁に暖房機能を備えたローマ帝国時代の風呂や船団、数百点に及ぶ彫刻なども見つかっている。

 専門家によると、ビミナツィウムはローマ時代の主要な集落の中では唯一、その上に近代都市が建設されていない。

 ベオグラード考古学研究所のミオミル・コラッチ(Miomir Korac)所長によると、大規模な地中レーダー調査の結果、スタリコストラッツ村のトウモロコシ畑の下にはローマ時代の都市が丸ごと眠っていることが分かっており、寺院、円形競技場、競馬・戦車用の競技場、造幣所、皇帝の宮殿などもあるという。

 専門家による発掘や調査が行われたのは、全体の2~3%にすぎない。(c)AFP/Miodrag SOVILJ