【12月26日 AFP】英イングランド南東の沖合約11キロ、北海(North Sea)の水面から突き出た金属とコンクリート製の建造物──。小さな「独立国家」、シーランド公国(Principality of Sealand)だ。英国政府に54年間抵抗しながら運営されてきた。

 シーランドは、空洞のコンクリートタワー2本の上に設置された対空砲要塞(ようさい)の跡だ。

 ここでも、訪問者は巻き揚げ機(ウインチ)でデッキに上がる前に新型コロナウイルスの陰性結果を提示しなければならない。

「コロナの感染者はゼロです」と誇らしげに言うリアム・ベイツ(Liam Bates)氏(33)は、自称シーランド「公子」の一人だ。「現時点で本当にそう言えるのは、世界中で私たちを含め、わずかな国しかないと思います」とAFPに語った。

 この元要塞は英国の領海外にあるため、第2次世界大戦(World War II)後、取り壊されることになっていた。しかし、そうはならなかった。リアム氏の祖父で、漁業の傍ら海賊ラジオ局を運営していた実業家のロイ・ベイツ(Roy Bates)氏がこの施設を占拠し、独立を宣言したのだ。

 シーランド公国の「建国」は1967年。国のスローガンは「E Mare Libertas(海から自由を)」で、独自の憲法、国旗、国歌も制定された。

 それ以来、風が吹きすさぶ元海上要塞は、「クーデター」未遂や大火災、データストレージ事業の破綻など、数々の危機を乗り越えてきた。