【12月16日 AFP】ドイツで2019年、ロシア・チェチェン(Chechen)共和国の元司令官が殺害された事件で、独裁判所は15日、ロシア政府の命令により殺害を実行したとして、ロシア人の男に終身刑を言い渡した。ドイツ政府は判決を受け、ロシア人外交官2人の国外追放を表明。両国間の対立は激化している。

 事件は19年8月23日の白昼、ベルリン市内の公園で発生。ジョージア国籍の元チェチェン司令官ゼリムカン・カンゴシュビリ(Zelimkhan Khangoshvili)氏(当時40歳。別名トルニケ・カブタラシュビリ、Tornike Kavtarashvili)が射殺された。

 ベルリンの裁判所は、ワジム・クラシコフ(Vadim Krasikov)被告(別名ワジム・ソコロフ、Vadim Sokolov)に対し、終身刑の有罪判決を下した。判事は、殺人が入念に計画されたものだったとの検察側の主張を認め、「ロシア国家当局が被告人に対し、被害者を粛清するよう命じた」と指摘。犯行はロシア政府に反対する立場を取ったことに対する「報復」の意図があったという見方を示した。

 ロシア政府は直ちに、「広い反ロシア感情」を背景とした「政治的」な判決だと非難した。

 欧米諸国では現在、ウクライナ国境でのロシア軍の活動をめぐる警戒感が高まっている。判決は、対ロシアで強硬姿勢を強めると宣言しているドイツの新政権にとって、最初の大きな試練となる。

 ドイツのアナレーナ・ベーアボック(Annalena Baerbock)新外相は駐独ロシア大使を呼び出し、判決を受けた措置としてロシア人外交官2人を国外追放すると伝えたと発表。記者会見で、「きょう裁判所が認定した国家命令による殺人は、ドイツの法律と主権の深刻な侵害だ」と批判した。(c)AFP/Femke COLBORNE with Michelle FITZPATRICK