【12月19日 AFP】「いいや、うちの猫は危険じゃない」──イランの超保守派議員が国会に提出したペット禁止法案に、首都テヘランの繁華街でペット用品店を営むムスタファさん(25)は怒りを募らせている。「ワニは危険といえるだろう。しかし、ウサギや犬、猫のどこが危険なんだ?」

 ムスタファさんをあぜんとさせた法案は先月発表され、イランで増加しているペットの飼い主たちと、ペットを飼うことは退廃的だと考える人や、シャリア(イスラム法)に基づいて犬を豚と同じく不潔な存在だとみなす人たちとの間に対立を生んでいる。

 報道によると、「有害で危険な動物に関する住民の権利支持」と題した法案には最近、国会議員75人が署名した。議員総数の4分の1に相当する。

 法案は冒頭で、人が家畜と一つ屋根の下で生活するのは「有害な社会問題」だと非難。「人と家族の関係が、動物に対する気持ちや情緒的関係に取って代わられる」ことにより、「イラン的かつイスラム的な生活様式が徐々に変わっていく」恐れがあると主張している。

 法案では、「野生動物、外来種、有害・危険な動物」の「輸入、飼育、繁殖と繁殖支援、売買、移送、車に乗せること、散歩、家庭内飼育」を禁止する。対象の動物として「ワニ、カメ、ヘビ、トカゲ、猫、ネズミ、ウサギ、犬などの不浄な動物、サル」を挙げている。

 違反者には、「最低月収」(約98ドル、約1万1000円)の10~30倍の罰金が科され、ペットは「没収」される。動物を車で運んだ場合、車両も3か月間押収される。

 法案はマスコミの批判を招き、ソーシャルメディアでも冷笑を買っている。ある人は、子猫の写真と共に「法案のことを知って、うちの猫を『犯罪者』に改名した」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 テヘランの住民からは怒りの声が上がっている。愛犬家のミナさんは、「今の若いカップルに子どもがいないのは、犬を飼っているからだと国会議員は思っているのだろうが、ばかげている」と非難した。

「私たちが子どもをもうけることができないのは、犬が理由じゃない。経済のせいだ」 (c)AFP/Ahmad Parhizi