【4月17日 AFP】雌犬のフレイヤは見つかったとき「顔が半分、吹き飛んでいた」。バーニーは刃物で刺された上にひどいやけどを負っていた。ダイアナはペレット弾を撃ち込まれてから、子育てに苦労している──来年サッカーW杯(2022 World Cup)が行われる中東のカタールで、野良犬や野良猫に対する虐待が急増している。

 カタールは長年、外国人居住者が帰国する際に置き去りにする動物の扱いに悩まされてきた。加えて新型コロナウイルス流行によるロックダウン(都市封鎖)の間に飼われ始めた犬や猫が、通常の生活が戻るにつれて捨てられ、野良犬や野良猫となる例が増えている。

 2022年サッカーW杯カタール大会に向けた建設プロジェクトが完了した今、多くの野良犬や野良猫が住宅地に追いやられ、虐待を受ける危険も増していると、動物レスキュー活動家らは警告する。

 ある活動家は「私たちが目にする被害はすさまじく、悪化する一方です」と語る。ほぼ毎週、銃撃されたり、故意に車でひかれたりした犬を助けてほしいという電話を受けている。

 2004年に施行された法律で、動物を不当に扱うことは犯罪とみなされる。だが、法律の運用に一貫性がないと活動家らは指摘する。

 理不尽にも、イスラム教は犬を不浄なものだと説くと信じる人々がいて、「犬は愛されていない」とあるボランティアはAFPに語った。「だからと言って、犬を苦しめたり殺したりする権利はない」

 カタール人のレスキュー活動家や彼らを支援する外国人居住者は、しばしばソーシャルメディアを通じて最近の事件の画像を交換している。銃撃や刺傷は日常茶飯事だ。「獣医師への支払いは天井知らずに増えている」と、匿名で取材に応じた動物保護施設のマネジャーが語った。

 レスキュー活動家をつなぐ非公式なネットワークは、捨てられた動物をできるだけ多く救済することを目指している。中には数十匹分のスペースを備えた施設もあるが、皆、資金的に逼迫(ひっぱく)している。

 保護施設はこうした難題の数々に加え、法的な承認を求めて苦闘している。絶対君主制のカタールにおいて、当局に対する批判や市民社会によるロビー活動はまれだ。

 だが、法的地位の欠如が、動物保護施設の運営や資金集めを難しくしている。「複数の企業スポンサーが寄付をしたがっていますが、彼らの金を受け取ることはできません」とある施設のマネジャーは言う。