【11月27日 AFP】ヨルダンのペトラ(Petra)遺跡に向かう観光客は長年、馬やラバが引く馬車に乗っていた。しかし動物愛護の観点から、こうした馬車を電動カートに置き換える試みが始まっている。

 現在運行されているのは、ゴルフ場のものと同様の充電式電動カート10台。「シーク(Siq)」と呼ばれるばら色の峡谷を抜け、紀元前1世紀にナバテア人が建てた都市ペトラの遺跡へ向かう。

 ペトラの開発・観光当局のスレイマン・ファラジャット(Suleiman Farajat)氏は、電動カートは汚染も排ガスもなく、切り替えによって「動物虐待の件数も減少した」と評価する。

 馬車だと「車輪が峡谷の岩壁に当たったり(中略)馬ふんが悪臭の原因となったりする。清掃も難しい」。カートの方がそうした問題が少ないと言う。

 ただし、ペトラ遺跡は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の「世界遺産(World Heritage)なので、その特徴を保全するために」一部の馬車を当面残す方針だ。

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 電動カートの導入が歓迎される理由はもう一つある。高齢者や障がい者もはるかに遺跡を訪れやすくなったのだ。

 オーストリアから観光に来た車いす利用者のルディさん(43)は「障がい者だけでなく、長い距離を歩くのが難しい人にとっても(中略)この素晴らしい場所を見るチャンスが開かれています」と語る。

 米国から来たアンジーさん(60)も同じ意見だ。「このような美しい場所に(カートが)あるのは少し場違いのようにも見えますが、私たちの年齢になると、電動カートで戻って来られるのがありがたかったです」 (c)AFP/ Mussa Hattar