【11月23日 AFP】シンガポールに出稼ぎに来ているバングラデシュ人のMD・シャリフ・ウディン(MD Sharif Uddin)さん(43)は、かつては休日になると狭苦しい寮を抜け出し、友人とコーヒーを飲むなどして過ごしていた。しかし、この1年半は新型コロナウイルス対策のために、休日も寮に閉じ込められている。

 人口約550万人のシンガポールでは、バングラデシュやインド、中国などからの外国人労働者30万人以上が寮生活を送っている。2段ベッドが並ぶ相部屋に押し込まれることが多い。

 新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)が始まると、シンガポールは全土に感染拡大を防ぐための行動制限を導入。しかし現在、新たな流行に見舞われているものの、制限はおおむね緩和され、ワクチンを接種していれば外出して買い物や食事ができるようになった。入国制限も徐々に緩和されている。

 ただし、低賃金で働く外国人労働者は蚊帳の外だ。今も厳格な行動制限が課され、寮と職場の往復以外の外出は原則禁止されている。

 建設現場で働くウディンさんはシンガポールに来て13年になる。「生活はとてもつらい。まるで刑務所だ」と訴える。「職場までの行き帰りしか許されない。他のどこへも行けない。自宅軟禁されているようだ」

 たまにではあるが、外国人労働者は店舗やスポーツ施設を備えた「レクリエーションセンター」を訪れることが許可されることもある。

 昨年の流行の第1波では、特に寮で多くの感染者が確認された。それをきっかけに、高層ビルの建設や住宅の清掃、公共交通機関の維持管理といった過酷な労働を支えてきた外国人労働者の生活環境の改善を求める声が上がり始めた。

 政府はこれを受け、近代的な設備を備えた寮の新設やすし詰め状態の住環境の改善などを約束した。ただ実際には、状況にほぼ変化はないとの批判もある。

 出稼ぎ労働者は、世界で最も生計費が掛かる都市の一つであるシンガポールで、1月当たり500~1000シンガポール・ドル(約4万2000~8万4000円)で働いている。

 出稼ぎ労働者の権利擁護団体「トランシエント・ワーカーズ・カウント・トゥ(Transient Workers Count Too)」の幹部アレックス・オー(Alex Au)氏は「政府は出稼ぎ労働者を人間扱いしていない」とAFPに語った。「経済を動かすための駒」のように扱っており、「シンガポール市民と同じ権利や自由」を認めていないと指摘した。

 政府は劣悪な住環境のために感染リスクが高いとして、寮で生活する外国人労働者を対象とした制限を継続している。寮で生活する外国人労働者のワクチン接種率は98%と、国民全体の85%を上回っている。(c)AFP