【11月12日 AFP】香港で12日、現代美術館「M+」が開館した。しかし、反体制派アーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ、Ai Weiwei)氏が北京の天安門広場(Tiananmen Square)などで中指を立てた一連の作品は展示されず、当局による検閲で香港における表現の自由が失われつつあることが浮き彫りになった。

 M+はビクトリア・ハーバー(Victoria Harbour)沿いの文化地区に位置し、広さは6万5000平方メートル。英国のテート・モダン(Tate Modern)や米ニューヨーク近代美術館(MoMA)などに匹敵する美術館を目指し開設された。

 しかし、コレクションの一部である艾氏の「中指シリーズ」は展示されない。このシリーズで艾氏は、米国のホワイトハウス(White House)やドイツの国会議事堂(Reichstag)、天安門広場など世界各地で中指を立てた写真を撮っている。

 文化地区の責任者、唐英年(Henry Tang)氏は11日の記者会見で「芸術的表現が法を超越するわけではない」とし「中指を立てた写真は展示しないが、他の艾未未氏の作品は展示する」と述べた。

 複数の親中派の政治家は今年、艾氏の天安門広場で中指を立てた写真は「国家の安全保障に対する脅威」だと述べた。

 中指シリーズを含む多数の作品をM+に寄贈したスイスの美術収集家ウリ・シグ(Uli Sigg)氏はこれを受け、「中国社会の大部分と特に香港社会の一部は、現代美術とは何かということについて、われわれと理解が異なる」と公開書簡で批判した。

 唐氏は、天安門広場で中指を立てた写真が検閲されたことや、M+が警察の治安部門による審査を受け入れたことを認め、香港国家安全維持法(国安法)に反した作品は「法に従って対応する」と述べた。

 アート業界関係者によると、近年香港では自己規制が増えていたが、影響力の強い親中派が国安法の適用範囲の拡大を求めており、表現の自由に対する圧力がますます高まっている。(c)AFP/Yan ZHAO / Xinqi SU