【11月10日 東方新報】来年2月4日から始まる北京冬季五輪。その主会場の一つ、中国・河北省(Hebei)張家口市(Zhangjiakou)崇礼区(Chongli)は「貧困区」に指定された地域だったが、ウインタースポーツの隆盛で大きな飛躍を遂げている。

 北京から北西に約220キロ離れた崇礼会場では、国家スキージャンプセンター「雪如意」や選手村、競技関連施設が集まる太子城氷雪小鎮、雲頂スキー公園競技場がある。スキージャンプセンターは標高差が約160メートルあり、外観が中国の伝統的な縁起物「如意」に似ていることから「雪如意」と名付けられた。10月下旬から北京と会場を結ぶ高速鉄道のテスト調整も始まっている。

 内モンゴル(Inner Mongolia)高原と華北平原の移行地帯に位置する崇礼区(Chongli)は大気の質が良いことで知られるが、年間降雪期間は約150日に及び、貧困区に指定されていた。住民は地元を「道が一本しかない、信号機もない街」と表現していた。

 35歳のスキーインストラクター、謝霆(Xie Ting)さんは「子どもの頃は雪が降ると玄関から出られないほどで、積雪でつぶれる家もありました」と振り返る。実家は農業をしていたが収入は少なく、謝さんは2004年に学校を卒業して一時は北京で働いていた。その後故郷に戻ると、ウインタースポーツが盛んになり始めており、関連施設の警備員に就職。友人と遊びで始めたスキーのとりことなり、経験を積んでインストラクターになった。

 2015年に冬季五輪の招致が決まった時は同僚と大喜びした。「これで崇礼も変わるだろうと思っていましたが、これほどまでとは思いませんでした」。海外での知名度が上がったことで外国人のスキー客が増え、2019年には米紙ニューヨークタイムズ(New York Times)が発表した「訪れる価値のある52の目的地」に選ばれた。謝さんはこの年にスキークラブを開設。年収は数十万元(約176万8530円)に増えた。謝さんは中国、米国、日本でスキーコーチの資格を取得し、北京大会で審判を務める機会を目前に控えている。まさに「昔は考えられなかった」生活に。「新型コロナウイルスが収束し、雪の都・崇礼を世界中の人々に楽しんでもらいたい」と願っている。

 1990年代前半、崇礼区から北京に出稼ぎに向かう人々は馬や徒歩で区の中心部に行き、さらにバスで張家口市の市街地に着き、北京行きの列車に乗った。列車に乗れない場合は2日間も歩かなければならなかった。今では高速鉄道が開通し、北京まで約1時間で行けるように。崇礼区では住民の5人に1人がウインタースポーツ施設や観光業に従事し、河北省政府は2019年、崇礼区を貧困区リストから除外した。 「崇礼」という地名は「礼儀を重んじる」を意味している。現地では万全の体制を整えようと競技場や運営のテストを重ねており、「礼」を持って世界のアスリートを迎えようとしている。(c)東方新報/AFPBB News