【11月11日 CNS】中国では、宅配便の利用者が都合の良い時間に商品を受け取れる「スマート宅配ボックス」の登場により、地域の宅配拠点から消費者に商品を届ける「最後の1マイル」といわれる問題が解消されつつある。この数年で多くの企業が参入する一方、ビジネスモデルとしてはまだ確立していないと専門家は指摘している。

 スマート宅配ボックスはモノのインターネット(IoT)連動型の無人宅配ボックスで、オフィス街や集合住宅などに設置されている。受取人が不在の時に配達員がボックスに荷物を入れ、受取人のスマートフォンに配達完了の通知とボックスを開けるための暗証番号を送付する。

 IT大手阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の物流企業「菜鳥網絡(Cainiao Network)」は9月、フランス・パリのビジネス地区や観光地など60か所にスマート宅配ボックスを設置。重慶市(Chongqing)からフランスに留学している李倩(Li Qian)さんは10月にサービスを利用し、「ネット通販の淘宝(タオバオ、Taobao)で買った品物をパリで受け取ることができるなんて!」と驚きながら喜んでいた。

 スマート宅配ボックスの登場は、配達時間やコストの向上をもたらした上、コロナ禍における非接触型配達を実現している。中国国家郵政局によると、2021年上半期の宅配取扱件数は前年同期比45.8ポイント増の493億9000万個、売上総額は26.6ポイント増の4842億1000万元(約8億5634万円)に達した。

 中国国家郵政局によると、2020年に全国のスマート宅配ボックスは75万か所に達し、市場規模は300億元(約5306億円)近いという。業界の専門家は、スマート宅配ボックスはまだ不足しており、海外も含めれば1000億元(約1兆7685億円)の市場があると見込まれている。

 IoT技術で物流システムを開発する河河南易達貨桟信息技術有限公司は1月、電子商取引(EC)大手の京東(JD.com)、蘇寧(Suning)、拼多多(Pinduoduo)から計約3500万元(約6億1899万円)の投資を受けた。易達は2020年12月に設立されたばかりで、設立から1か月弱でEC大手3社から共同投資を受けた。信用調査会社の天眼査(Tianyancha)によると、今年10月17日の時点で中国には800社を超えるスマート宅配ボックスのボックス関連企業がある。このうち280社強は2020年に新設された企業だ。

 一方、物流専門家でスウェーデン王立工科大学(Royal Institute of Technology)客員教授の王勇(Wang Yong)氏は「スマート宅配ボックスのビジネスモデルはまだ明確ではない」と指摘する。宅配ボックスの収入は0.3~1元(約5〜17円)の保管費用がメインとなっている。宅配ボックスを運営する菜鳥や豊巣(Hive Box)は広告や小売りなどのビジネスを始めたが、成功に至っていない。

 豊巣の徐育斌(Xu Yubin)最高経営責任者(CEO)は「宅配会社との提携で収益を上げると同時に、アプリを通じて得たユーザーの行動データを詳細に分析し、新しいビジネスに活用したい」と見通しを語っている。(c)CNS-工人日報/JCM/AFPBB News