【11月9日 AFP】車いすテニス、クアードの男子シングルスで史上初の年間ゴールデンスラムを達成したディラン・アルコット(Dylan Alcott、オーストラリア)が9日、来年1月の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2022)を最後に現役を引退すると表明した。

 四大大会(グランドスラム)でシングルス通算15勝、ダブルス通算8勝を誇り、クアードクラスにおける史上最高の選手として知られる30歳のアルコットは、2022年のグランドスラム初戦として行われる全豪オープンが最後の大会になると明らかにした。

 9月の全米オープン(US Open Tennis Championships 2021)で優勝し、同一年にグランドスラムの4大会全てとパラリンピックを制するゴールデンスラムを成し遂げた同選手はメルボルンで報道陣に対し、「ここは地元であり、全豪オープンとテニスが自分の人生を変えてくれた」と語った。

「テニスがなければ、きょうこうして皆さんの前で話すことはなかったし、ここに座っていることもなかったというのが正直なところだ。全てテニスのおかげだ」

 オーストラリアを代表するスポーツ選手でメディアの申し子でもあるアルコットは、コートでの成績よりも障害者に対する認識を変えた自分の役割の方が「少しばかり誇りに思う」とし、「良いテニスプレーヤーでいることは、人生での優先順位は32番目くらいで、良い人間でいることが1番目だ」と述べた。

「障害者のコミュニティーにおける良き提唱者として、自分のような人々への認識を変化させ、彼らがふさわしい生き方をし、自分のような機会を持つことができるようにする」

 これまでの長いキャリアにおいて、アルコットは当初車いすバスケットでパラリンピックに出場。17歳で臨んだ2008年の北京大会で母国に金メダルをもたらし、2012年のロンドン大会でも銀メダルに輝いた。

 その後、2016年のリオデジャネイロ大会では車いすテニスに転向し、クアードのシングルスとダブルスを制覇。今年9月に開催された東京パラリンピックでは、ダブルスは銀メダルに終わったもののシングルスでは優勝し、その1週間後に全米オープンでゴールデンスラムを達成した。(c)AFP