【11月8日 東方新報】中国で毎年11月11日に開催される世界最大級のオンラインショッピングイベント「双11(ダブルイレブン)」が今年もやってきた。10月20日から予約販売が始まっており、今年は「グリーン(エコロジー、省エネの意味)」と「低炭素」がキーワードになっている。

 IT大手阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)のショッピングモール「天猫(Tmall)」は今年、「エコなライフスタイル」をテーマとし、省エネ製品や低炭素製品を展示する専門サイトを新設。各企業は省エネタイプのエアコンや冷蔵庫、洗濯機、テレビ、スマート給湯器、節水型トイレ、新エネルギー自動車(NEV)、有機食品などの販売に力を入れている。

 中国政府は昨年、二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までにピークアウト(これ以上、上昇しない段階)させ、2060年までに排出量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルを達成すると表明。国内では「双炭(ダブルカーボン)」「3060」がキーワードとなっている。

「グリーン」と「低炭素」は、商品に限らない。アリババはダブルイレブンセールで稼働する河北省(Hebei)のデータセンターで約3000万キロワット時のクリーン電力を使用し、2万6000トンのCO2を削減するとしている。家電量販大手でECも手掛ける蘇寧易購(Suning)はダブルイレブンで家電の下取りサービスを前面に打ち出し、下取り件数は前年の2倍近い勢い。また、商品の包装に使う発泡スチロールを再利用可能な発泡ポリエチレンに切り替えたり、物流・配送作業にクリーン電力やNEVを導入したりする企業も多い。ダブルイレブンは、参加企業にとってCO2削減の実験場となっている。

 CO2削減というと、鉄鋼やセメントといった製造業界や自動車業界などの問題というイメージが強いが、IT産業の電気消費によるCO2排出も無視できない。国務院発展研究センター研究員の周宏春(Zhou Hongchun)氏によると、中国国内のデータセンターが排出するCO2は年間約1億トン。華北電力大学の推計では、2035年に中国のデータセンターと第5世代移動通信システム(5G)の総電力消費量は2020年の2.5~3倍となり、中国全体のCO2排出量の2~4%を占めるという。また、中国の2020年の宅配便取扱件数は前年比31.2%増の833億6000万個で7年連続世界一となっており、商品の包装・配送でもCO2削減の意識が必要となっている。

 中国では、「独り者」をイメージする数字の「1」が四つ並ぶ11月11日を「独身の日」と呼んでいる。アリババが2009年に「独身の日に自分へのごほうびを買おう」と若者向けに大規模販促イベントを始めたことをきっかけに、今では中国全土や世界の企業が参入する爆売り・爆買いセールに発展した。2020年の中国の国内総生産(GDP)のうち最終消費支出は54.3%を占めている。周宏春氏は「中国の消費の宴である『ダブルイレブン』で、いかにしてグリーンと低炭素の概念を普及させるかが、国民全体の理念を導く上で重要となる」と指摘。「ダブルイレブン」商戦が「ダブルカーボン」社会実現の試金石となっている。(c)東方新報/AFPBB News