【11月4日 AFP】米国で、献体された遺体の解剖を有料で見学するイベントが催され、見学者がいるとは知らなかったと遺族が抗議する騒ぎとなっている。企画会社は3日、正当性を主張した。

 問題となっているのは先月、オレゴン州ポートランド(Portland)のホテルの大広間で行われたイベント。98歳で亡くなったデービッド・サンダーズ(David Saunders)さんの遺体が解剖され、最大500ドル(約5万7000円)を支払った約70人がその様子を見学した。

 地方テレビ局キング5(King 5)によると、解剖学の元教授で医師のコリン・ヘンダーソン(Colin Henderson)氏が数時間かけ、サンダーズさんの脳などの器官を取り出した。ヘンダーソン医師は教授時代に頻繁に解剖を行っていたという。

 キング5が撮影した映像には、手術用手袋を着けた見学者が遺体に触れているように見える場面もあった。

 見学会の企画会社「デス・サイエンス(Death Science)」は、自社を「教育者と連携し、教室を超えた学びを提供する独立系教育プラットフォーム」と紹介。見学会のチケット販売ページには「参加者が何度か遺体を間近に見る機会がある」と書かれていた。

 デス・サイエンス創立者のジェレミー・シリベルト(Jeremy Ciliberto)氏はAFPに書面で、見学会の目的は「人体についてより深く学びたい個人に有益な体験を提供する」ことだと説明した。

 キング5はサンダーズさんの遺体を取り扱ったルイジアナ州の葬儀会社の話を報じた。これによると遺族は、医学研究のために使われることを想定して、「医学と科学の進歩」のため献体を呼び掛けている会社「メド・エド・ラブズ(Med Ed Labs)」にサンダーズさんの遺体を引き渡したという。

 デス・サイエンスのシリベルト氏は、自社はサンダーズさん遺族とメド・エド・ラブズの間のいかなる契約にも関与していないとし、同氏とメド・エド・ラブズは「提供された遺体は研究や医学・教育目的で無償提供された」ことを確認したと述べた。

 メド・エド・ラブズの担当者はAFPに対し、客を入れた解剖の見学会が行われることは把握しておらず、知っていたら遺体は提供しなかったとコメント。科学や救急医療、検視、解剖、人体研究などに関心がある学生の実習用に遺体が使われると認識していたと釈明した。

 ポートランド警察は、捜査官が検察と相談し、違法行為はないと判断したと明らかにした。(c)AFP