■「すべて焦げ臭い」

 2月に開設されたムトゥア・タラサ病院の嗅覚外来でこれまでに治療を受けた約90人の大半は、オビエドさん同様、いわゆる「ロング・コビッド(COVID)」と呼ばれるコロナの長期後遺症の患者だ。

 初診後、4か月間のリハビリプログラムが始まる。週1回、療法士の指導の下でにおいを嗅ぎ分けるトレーニングも行う。オビエドさんはすでにこのプログラムは終えているが、現在も定期的に診察を受け、症状の改善状態を確かめている。

 しかし今のところ変化はない。「前みたいに、うちに帰って来た時に、ああ、わが家のにおいだと言えるようになりたいです」。今は自分の体臭も分からないので、以前より頻繁にシャワーを浴びるようになった。

 嗅覚が戻っても、異常が続く人たちもいる。

「何を嗅いでも、焦げ臭いと感じるようになりました。まるで揚げ物の鍋の上に鼻があるみたいです」と語るクリスティーナ・バルディビア(Cristina Valdivia)さん(47)。去年3月にコロナに感染し、3か月間、完全に嗅覚を失っていた。

 思い悩み、専門家に何度も相談した末、オスピタルクリニックへ行くと、本来と異なるにおいを感じる嗅覚障害の刺激性異臭症(パロスミア)と診断された。コロナ回復後の患者によく下される診断だ。