ネトフリ支援のアニメーター塾、高まる需要に応え次世代育成目指す
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【11月7日 AFP】手元には数本の鉛筆と羽ぼうき。アニメの需要が世界的に高まる中、舘野仁美(Hitomi Tateno)さんは、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)が資金提供しアニメ制作大手のWIT STUDIOが都内で新たに開講したアニメーター塾で、次世代のアニメーターを育成している。
劇場版が大ヒットした「鬼滅の刃(Demon Slayer)」シリーズや、今年のカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で評判を呼んだ『竜とそばかすの姫(BELLE)』など、アニメ作品は海外でもサブカルチャーの枠を超えて躍進している。新型コロナウイルスの流行によるロックダウン(都市封鎖)中には、多くの新しいファンも生まれた。
しかし、日本ではスキルを備えたアニメーターが不足している。多くの場合、低賃金の研修期間が長年続くことが一因だ。このため、原画の間を一コマ一コマ埋めていく「動画」作業は、大半が韓国や中国など海外に委託されている。
ネットフリックスは、こうした状況を「WITアニメーター塾(WIT Animator Academy)」によって変えられると考えている。同塾に通うアニメーターの卵には、授業料が免除されるほか、受講期間中の生活費として一定額が支給される。
研修は基本6か月間で、絵が動いて見えるように原画の間を埋めるコマを描く「動画」作業のスキルを学ぶ。
指導にあたる舘野さんは、スタジオジブリ(Studio Ghibli)の『千と千尋の神隠し(SPIRITED AWAY)』からカルト的な名作『AKIRA』まで、トップレベルのさまざまな作品に関わり、「動画」の分野でキャリアを築き上げた人物だ。
舘野さんはアニメーター志望者について、「そこ(動画)はスキップして、原画(担当)になりたいと思っている人が多いので、動画を長くやろうという人がなかなか長続きしない」と語る。
ネットフリックスは、この塾が「日本のアニメーターが作品を通じて世界に羽ばたく未来」に向けた一助になることを願っている。今後は幅を広げて、アニメーションの他の専門分野に進む道も提供する予定だ。
卒業生は、WIT STUDIOか関連会社で、ネットフリックスの番組制作チームに加わる機会が得られる。
日本アニメーター・演出協会(JAniCA)の顧問弁護士で役員の桶田大介(Daisuke Okeda)氏は、WITアニメーター塾は業界を変える流れの一部だという。
同氏がAFPに語ったところによると、スキルの高い「動画」チームがアニメーションの品質を引き上げることは広く知られている。大手スタジオも「動画」スキルへの投資を始めており、業界はすでに変わりつつあるという。(c)AFP/Harumi OZAWA