【10月26日 AFP】オーストラリアのスコット・モリソン(Scott Morrison)首相は26日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする方針を発表した。同国は石炭の埋蔵量が多く、これまで排出量削減には慎重だった。国連(UN)の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に国内外から圧力が高まる中、実質ゼロを表明したものの、詳細や短期目標の提示は避けた。

 世界最大の石炭・天然ガス輸出国の一つである同国は、気候変動対策に後れを取っていると考えられている。

 同国の保守政権は過去8年にわたり、石炭関連の新規事業の承認を続け、気候変動に懐疑的な姿勢を示している。

 モリソン氏は26日の記者会見で「世界は変わりつつある」ことを認め、国民が「気候変動について正しい行動を取る」政策を求めていると指摘。気候変動は「現実に起きている。われわれはそれを理解し、認めている」と述べた。

 ただ、2050年までに具体的にどのように排出量ゼロを達成するのかは明らかにしなかった。

 政府は今後10年で低排出技術に150億ドル(約1兆7000億円)を投じる計画。だが、その計画は立証されていない技術や、数字をごまかすだけのものとの批判もある排出量相殺(カーボンオフセット)に大きく依存している。

 モリソン氏はまた、長年続けてきた化石燃料産業への支援をやめるつもりはないと強調。今回の計画は、「石炭やガスの生産や輸出を止めるものではない」と述べた。

 2030年までの目標に関しては引き上げをしなかった。2005年比で排出量を26~28%削減するという従来の目標については「間違いなく達成できる」との見通しを示した。2030年までに30~35%削減できるとしている。

 モリソン氏は来月、英グラスゴーで行われるCOP26の首脳会議に出席する予定。(c)AFP