【11月4日 AFP】アフガニスタン辺境のバーラーモルガーブ(Bala Murghab)では、あちこちの畑がからからに乾燥し、干ばつが広がっている。この地域で恐れられているのは、電撃的な攻勢で政権を掌握したイスラム主義組織タリバン(Taliban)よりも気候変動だ。

「最後に雨が降ったのは去年です。それも大した量ではありませんでした」。同地域にあるハジラシドカーン(Haji Rashid Khan)村の首長、ムラー・ファテフ(Mullah Fateh)氏は言う。

 西部バドギス(Badghis)州のこの一角では、緩やかな丘陵がどこまでも広がり、点在する泥れんがの家で暮らす人々は必死に命をつないでいる。仏援助団体「ACTED」によると、州の人口60万人のうち90%は畜産か農業で生計を立てている。

「羊を売って食料を買いました。それ以外の羊は水不足で死んでしまいました」とファテフ氏は語った。前回、干ばつに見舞われた2018年には羊を300頭飼っていたが、今回の日照りで20頭にまで減ったという。

 村に水が必要になると、ファテフ氏は、少年や大人の男性にロバで丸一日かけて水をくみに行かせる。今年は、この丘陵地帯で若い羊飼い2人が水不足により命を落とした。

 水不足は、家族の絆にも打撃を与えている。

 学校も診療所もないハジラシドカーン村では、今年に入ってから、食べ物を買う金銭を工面するために20世帯が幼い娘を売って結婚させた。

 7人の子どもを持つビビ・イェレ(Bibi Yeleh)さんは、金銭と引き換えに15歳の娘を結婚させた。じきに7歳の娘も同じ運命をたどるだろう。干ばつが続けば、今は2歳と5歳の娘たちも、後に続くことになるとイェレさんは言う。

 ドイツの環境シンクタンク、ジャーマンウオッチ(Germanwatch)の調査では、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出によって気候変動の影響を最も受けている国のランキングでアフガニスタンは6位になっている。

 世界銀行(World Bank)のデータによると、アフガニスタンでは国民1人当たりの年間CO2排出量は0.2トン。同じデータで米国の平均は15トンだ。

 国連機関は10月25日、アフガニスタンではこの冬、2200万人以上が「深刻な食糧不足」に陥る恐れがあると発表。情勢が不安定な同国は、世界でも最悪レベルの人道的な危機に直面すると警告した。(c)AFP/Elise BLANCHARD