【10月26日 AFP】米俳優アレック・ボールドウィン(Alec Baldwin)さん(63)が主演映画の撮影中に小道具の銃を誤射し、撮影監督が死亡した事故で、ボールドウィンさんは当時、ホルスターから銃を引き抜いてカメラに向けるシーンの練習中だったことが、監督の警察に対する供述から明らかになった。

 事故は21日、ニューメキシコ州にある西部劇映画『ラスト(Rust、原題)』の撮影現場で発生。胸に銃弾を受けた撮影監督のハリーナ・ハッチンス(Halyna Hutchins)さん(42)が死亡したほか、ジョエル・ソウザ(Joel Souza)監督(48)が肩を負傷。ソウザ監督は病院で治療を受けた後、退院した。

 サンタフェ(Santa Fe)郡保安官事務所が公表したソウザ監督の宣誓供述書によると、ボールドウィンさんは事故発生時、教会のセットの席に座り、レボルバーを「クロスドロー(ホルスターとは反対側の手で銃を抜くこと)」でカメラレンズに向ける練習をしていた。ソウザ監督はハッチンスさんの肩越しにその様子を見ていたところ、「むちのような音と、大きな破裂音が聞こえた」という。

 ハッチンスさんは腹部の異常を訴え、自分のみぞおちをつかむと、後ろによろめき、周囲の人に支えられながら倒れた。ソウザ監督は「自分が肩から出血し、ハリーナに血が付いているのが見えた」と説明している。

 事故を起こした銃は、安全な小道具としてボールドウィンさんに渡されていた。事故に関連した逮捕者は今のところ出ていない。

 事故原因をめぐっては、銃をボールドウィンさんに渡したデイブ・ホールズ(Dave Halls)助監督と、武器担当者のハンナ・グティエレスリード(Hannah Gutierrez-Reed)さん(24)に注目が集まっている。供述書によると、ホールズ助監督はグティエレスリードさんがカートに置いた小道具の銃3丁のうちの一つをボールドウィンさんに渡した。ホールズ助監督はその際、銃に実弾が入っていることを知らず、実弾入りではない銃を意味する「コールド・ガン」と叫んでいた。

 ホールズ助監督が以前所属していた映画制作会社は25日、同氏が銃の安全規則に違反して同社を解雇されたことを明らかにした。

 2022年公開予定の映画『フリーダムズ・パス(Freedom's Path、原題)』のプロデューサーがAFPに明らかにしたところによると、ホールズ助監督は、小道具の銃の誤射でスタッフ1人が軽傷を負う事故の後間もなく同作の撮影現場を外された。

 ホールズ助監督が外されるまで撮影は再開されず、事故報告書が作成・提出されたとされる。(c)AFP