【8月5日 AFP】メキシコ政府は4日、米国から密輸された大量の銃器が国内で多発する麻薬組織絡みの暴力事件を助長しているとして、複数の米大手銃器製造会社を米ボストン(Boston)の裁判所に提訴したと明らかにした。米銃器大手の「過失」を主張し、損害賠償を求めている。

 長年、米国への麻薬密輸を抑え込むよう米政府から圧力を受けてきたメキシコが、逆に米国側に銃器密輸の取り締まりを迫る形となった。メキシコ政府がこうした訴訟に踏み切るのは、マルセロ・エブラルド(Marcelo Ebrard)外相によると今回が初めて。

 被告はスミス・アンド・ウェッソン(Smith & Wesson)、ベレッタ(Beretta)、コルト(Colt)、グロック(Glock)、センチュリー・アームズ(Century Arms)、ルガー(Ruger)、バレット (Barrett)など。

 メキシコ当局によれば、メキシコには年間50万丁を超える銃器が不法に持ち込まれるが、その3分の2以上を米銃器大手が製造している。メキシコ外務省は4日夜、国内の犯罪現場で押収した銃器の70~90%が米国から密輸されたものだったと発表した。

 こうした銃器の密輸は、米銃器業界に莫大(ばくだい)な利益をもたらしている。エブラルド氏は、米銃器各社の「過失のある商行為」による損害に対する賠償を請求すると述べた一方、訴訟の最大の狙いは銃器メーカーの行動変容を促すことだと説明した。賠償金額は訴訟の中で決定される。

 メキシコ政府は、今回の訴訟は米政府を相手取ったものではなく、また訴えには「法的かつ道義的な」根拠があるとして、米国との外交問題には発展しないとの見方を示している。(c)AFP/Jean Luis Arce