【10月21日 AFP】米ニューヨーク大学ランゴーン医療センター(NYU Langone Health)の外科医らが、ブタの腎臓をヒトに一時的に移植することに成功した。臓器移植における画期的な進歩で、手術を行った医師は「奇跡を起こす可能性を秘めている」と述べている。

 先月25日に行われた手術では、脳死状態で人工呼吸器を必要とする患者の脚の付け根の血管に、遺伝子操作で免疫系の拒絶反応を引き起こす遺伝子を取り除いたブタの腎臓をつないだ。患者の家族は、科学の進歩のために、2日間の実験を許可した。

 ランゴーン医療センター移植研究所のロバート・モンゴメリー(Robert Montgomery)所長は、移植したブタの腎臓が「想定した通りの役割を果たし、老廃物を取り除いて尿をつくった」とAFPに語った。

 重要な点として、腎臓の機能レベルを示す指標であるクレアチニンの値が手術前は上昇していたが、ブタの腎臓を移植した後は低下したことが確認できた。

 モンゴメリー氏によると、この患者は臓器提供の意思を表明していたものの、どの臓器も移植に適していないことが判明し、家族は落胆していた。だが「今回の実験が別の形で臓器提供に寄与する機会だということに、家族は安心したようだ」という。54時間に及ぶ実験の後、患者は人工呼吸器を外されて亡くなった。

 ブタの腎臓は、ヒト以外の霊長類に移植した場合、最長で1年間機能することがこれまでの研究で確認されているが、ヒトへの移植が試みられたのは今回が初めて。

 モンゴメリー氏は「3週間後、3か月後、3年後に何が起きるかは、まだ分からない」としつつ、「これは本当に重要な中間ステップで、少なくとも最初のうちはうまくいきそうだということが分かった」と説明。今後1~2年以内に臨床試験を実施できる可能性があると述べた。

 英バーミンガム大学(University of Birmingham)のハイネック・マーゲンタル(Hynek Mergental)医師(外科)は、今回の実験結果が確認されれば「臓器移植分野における大きな前進となる。移植用臓器の深刻な不足を解消できるかもしれない」と期待を示した。(c)AFP/Issam AHMED