【10月21日 AFP】ブラジル政府の新型コロナウイルス対応を調査していた同国の上院委員会は20日、調査結果をまとめた報告書を発表し、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領(66)を人道に対する罪など少なくとも10件の罪で訴追するよう勧告した。ボルソナロ氏は直ちに反発し、「何の罪も犯していない」と主張した。

 ブラジルではこれまでに新型ウイルス感染により60万人以上が亡くなっており、死者数は世界で2番目に多い。上院委員会が6か月に及び開いた公聴会では、遺族が涙ながらに証言したり、関係者が戦慄(せんりつ)の事実を明らかにしたりといった場面が繰り広げられた。

 ボルソナロ氏は、新型コロナウイルスを「軽いインフルエンザ」と呼ぶなど、その深刻さを軽視する発言を繰り返したほか、科学者が効能を否定している治療法を推奨したり、感染拡大を抑えるロックダウン(都市封鎖)措置やワクチン接種に反対したりした。

 委員会は1200ページに及ぶ報告書で、ボルソナロ氏とその息子3人、閣僚4人、元閣僚2人を含む約60人の訴追を勧告。議会は来週、報告書の承認をめぐる採決を行う予定だ。報告書での結論は重大なものだが、ボルソナロ氏は議会の支持を十分得ていることから自身に対する弾劾手続きを回避できる見通しで、報告書は形式的なものにとどまる可能性がある。

 調査委員会に訴追権限はないが、その調査結果は政治的影響を生み得る。報告書は今後、検察と連邦会計検査院に送られる予定で、さらにオランダ・ハーグ(The Hague)の国際刑事裁判所(ICC)に送られる可能性もある。ボルソナロ氏はすでにICCで別の問題に関する告発を受けている。(c)AFP/Valeria Pacheco, with Louis Genot