■「全国民が知っている」

 中村七段は、藤井三冠が有名になったことで、棋士自身に興味を持つカジュアルなファンを引きつけていると話す。「自分では将棋をやらないけれどプロの将棋を見るのが好き、という方も格段に増えました」

 将棋をテーマにした漫画やアニメの人気も関心の高まりに一役買っている。「誰対誰という対戦にあたって、こういうストーリーがあるから、そのストーリーも含めて楽しむという…将棋を楽しむ幅が広がったように思います」

 将棋界にはかつても神童と呼ばれた棋士がいた。羽生善治(Yoshiharu Habu)九段だ。

 羽生九段は1989年に19歳で初タイトルを獲得。1996年に当時の七大タイトルすべてを独占する史上初の七冠を達成し、この偉業は誰にも塗り替えられていない。2018年には国民栄誉賞を受賞し、これまでに通算99期のタイトルを獲得している。

「(将棋を)指す人は、羽生さんの時代のほうが多かったかもしれません。だけど今はだいぶ変わってきました。見るファンが劇的に増えている」と石田九段。「羽生フィーバーの時代もすごかったですけど、プロ(棋士)が全国民に知られるような意味においては藤井さんのほうが上です」

 藤井三冠の活躍を受け、石田九段が教える子ども向けの将棋教室でも生徒が増えている。子どもたちが憧れる棋士はもちろん藤井三冠だ。

 ある少年は、駒の音に負けじと声を張り上げ「藤井聡太はとても格好いい人です」と言い、自分も大人になったら「将棋のプロになりたい」と話した。(c)AFP/Andrew MCKIRDY