【10月19日 東方新報】中国でここ2年ほど、幼稚園児や小学生向けの化粧品を販売する「キッズコスメ市場」が急激に成長している。化粧品を使う子どもは推定で5000万人。インターネット上では化粧品を勧める子どもの網紅(ネットスター)も登場している。これに対し「子どもの健康や教育に悪い」という声も高まり、国家薬品監督管理局は10月8日、安全基準の厳格化などを定めた「児童化粧品監督管理規定」を発表した。

 口紅、グロス、チーク、アイシャドー、マニキュア、パウダー、メイクブラシ…。中国のECサイトでは大人向けと変わらないほど子ども用化粧品が数多く販売され、「5歳の誕生プレゼントに」「小さなプリンセスに変身」などの宣伝文句が並んでいる。大手越境ECプラットフォーム「考拉海購(Kaola)」によると、2020年の子ども用化粧品の売上額は2019年に比べて300%増加。また、EC大手の京東(JD.com)によると、今年1~5月の子ども用化粧品の種類は前年同期比の9倍となっており、ものすごい勢いでキッズコスメ市場が膨れ上がっている。

 購入するのは、20代から30代前半のママが多い。SNSの投稿が趣味のママたちが子どもに化粧をさせた画像をアップし、自慢の子どもをPRしている。中国で「顔面偏差値」という言葉が広まっていることも影響がある。芸能人やネットのインフルエンサーは容姿が美しいことで収入を増やしているとして、「外見の良さが社会的成功を生む」という考え方。母親が化粧を通じて子どもに「自分磨き」の意識を早いうちから与えようとしているとも言える。

 SNS上では、幼稚園児や小学生の「網紅」が登場。メイクの様子を動画でライブ配信しながら特定の化粧品を紹介し、「ママにおねだりして買ってもらって」と呼びかけている。中国ではネット上で商品を宣伝する「ライブコマース」が主要な商品購入ルートの一つとなっており、配信者は売り上げに応じて報酬を受け取れる。

 過熱するブームに対しては「皮膚が未発達な子どもに化粧品は不要」「子どもに偏った美意識を植え付ける」という医学面、教育面からの指摘があり、さらに「親が幼い子どもを使ってライブコマースで金もうけをしている」という批判も出ている。中国の広告法では10歳未満の子どもを広告のイメージキャラクターに使うことを原則禁止しており、法律界からも「子どもを使ったECサイトの宣伝やライブコマースは違法行為だ」という指摘もある。

 こうした流れを受け、国家薬品監督管理局は子ども用化粧品の管理規定を発表。「12歳以下の児童が使う化粧品は洗浄や保湿、日焼け防止などの効能を有するものを指す」「製品パッケージに国家薬品監督管理局が規定するラベルを貼付する」「製品の原料にシミやニキビの除去、美白、脱毛、消臭、毛染め、パーマを目的とするものの使用を禁止する」などの細かい規定を明確化した。来年1月1日から施行し、過熱化するキッズコスメ市場に歯止めをかけようとしている。(c)東方新報/AFPBB News