【10月16日 AFP】香港大学(HKU)が構内に設置されている天安門(Tiananmen)事件の犠牲者を追悼する記念像の撤去を命じた問題で、大学側の代理人を務めていた世界的法律事務所が代理業務から退くことになったと米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)が報じた。同事務所をめぐっては、中国当局による反体制派の一掃に手を貸しているとの批判が米国内で殺到していた。

 撤去が命じられた高さ8メートルの「国恥の柱(Pillar of Shame)」はデンマーク人彫刻家イェンス・ガルシュット(Jens Galschiot)氏が手掛けたもので、香港が中国に返還された1997年から香港大に設置されている。

 像は拷問され苦悶(くもん)の表情を浮かべる50人の体が積み重ねられたデザインで、1989年に中国・北京の天安門広場に民主化を求め集まり、軍に殺害されたデモの参加者を追悼している。

 ワシントン・ポストによると大学側の代理人だった法律事務所のメイヤー・ブラウン(Mayer Brown)は15日、「今後メイヤー・ブラウンはこの件においてクライアントの代理を務めることはない。これ以上のコメントは無い」との声明を発表した。

 米シカゴで設立されたメイヤー・ブラウンは米国内で市民権に関する案件を取り扱ってきたが、像の撤去を進める香港大の代理を務めていることについて人権団体や米国の議員から非難の声が上がっていた。

 リンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員は「天安門広場で自由のために犠牲となった、勇敢で若き学生たちの記憶を消し去ろうとする中国共産党のために米国の法律事務所が動いているのは言語道断だ」と述べ、テッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員も「(像の撤去に)関与している米国の企業は恥じるべきだ」とメイヤー・ブラウンを批判した。

 同事務所の判断を受けてガルシュット氏は、欧米の法律事務所が「評判やイメージを著しく損なうことなく」中国や香港当局の代理を務めることは不可能に近いとの見解を示した。(c)AFP