【10月14日 AFP】スペイン・マドリード近郊のトレド大聖堂(Toledo Cathedral)の中で男性ラッパーと女性歌手がエロチックなダンスを踊るミュージックビデオ(MV)が信者たちの怒りを買い、司祭1人が辞任、大司教が謝罪に追い込まれる事態となっている。MVにはモザイクをかけたヌードシーンも含まれていた。

 8日に配信されたMVでは、スペイン人ラッパーのセー・タンガナ(C. Tangana)さんとアルゼンチン人歌手ナティ・ぺルーソ(Nathy Peluso)さんが、大聖堂内で手足を絡めるようにして官能的に踊る様子を、礼拝に来ていた信者たちが柱の陰からぼうぜんとのぞいているという内容。ぺルーソさんは太ももがあらわな格好をしている。

 共にラテン・グラミー賞(Latin GRAMMY Awards)受賞者の2人は、「無神論者だったけれど、今は信じている。なぜなら、あなたのような奇跡は天からやって来たに違いないから」と歌う。

 モザイクのかかったぺルーソさんのヌードシーンや、タンガナさんがぺルーソさんの長い髪を引っ張って挑発的なポーズを取らせるシーンが、ツイッター(Twitter)で特に非難の的となった。

 15世紀の大司教エルナンド・デ・タラベラ(Hernando de Talavera)の名前を冠したアカウントは、「トレド大聖堂が神聖なる聖域をいくらでセー・タンガナに売ったのか知りたい。大司教が司教座の冒涜(ぼうとく)に同意したのかも知りたい」と投稿。「恥を知れ」とツイートした。

 トレド大司教はMV配信後、大聖堂内で撮影が行われることや映像の内容について「一切知らなかった」と文書で釈明。「神聖な場の不適切な使用に不快感を覚えた」信者に謝罪するとともに、映像に「深い遺憾の意」を表した。

 だが、騒動はこれで収まらず、MV撮影を許可したフアン・ミゲル・フェレール(Juan Miguel Ferrer)主任司祭が12日に辞表を提出した。「ここ数日の出来事の中で犯したかもしれない言葉や行い、不作為による過ち」への「許し」を請い、辞任するのが正しい選択に思うと述べている。

 フェレール司祭の16日付での辞任を受け入れた大司教は、17日にトレド大聖堂を「浄化」するミサを行うと発表し、信者を招待した。(c)AFP