【5月26日 AFP】弾むように腰を振って踊る歌手ジェマイマ・カンシメ(Jemimah Kansiime)さん(21)のミュージックビデオは、母国ウガンダのファンたちの間で大ヒットした。だが、保守的な政治家たちによれば、それは新たに制定された「反ポルノ法」に違反しているという。

「男性たちのための薬」を意味する「パナドル・ワ・バサジャ(Panadol wa Basajja)」の芸名で音楽活動をしているカンシメさんは、泡まみれの尻をなまめかしく強調したミュージックビデオを理由に逮捕・起訴された。2014年2月施行の「反ポルノ法」で訴追されたのは、カンシメさんが初。有罪になれば、最長で禁錮10年の刑が科される可能性がある。

「反ポルノ法」について、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch、HRW)など反対派は、ポルノの定義が曖昧すぎると批判している。同法を理由に、露出の多い服装をしているというだけで女性が攻撃の対象となる恐れがあるというのだ。

 厳格な「反同性愛法」が物議を醸しているウガンダでは、キリスト教保守派が台頭しており、カンシメさんらポップスターより米国から来た福音派の牧師らのほうがしばしばロックスター並みの大歓迎を受ける。カンシメさん逮捕の件も、「反同性愛法」に代表される反リベラル運動の拡大の一環だと人権活動家らはみている。

「社会の一角に保守派がいるのは知っていた」と、カンシメさんは片目を覆い隠す色鮮やかなヘアエクステンションをなでつつ語った。だが、カンシメさんが敬愛するリアーナ(Rihanna)さんやニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)さんら米国のポップスターたちから学んだのは、「性的なものは売れる」ということだ。「私はただ、丈の短いドレスを着たら視聴者はどう反応するのか、試してみただけ」

 カンシメさんが昨年制作したミュージックビデオは、シャワーを浴びながら若い恋人たちの恋愛を歌い上げる内容で、楽曲名は「あなたを待っているの」。ファンには大人気で、動画サイトのユーチューブ(YouTube)では再生回数が14万回を超えた。

 ところが、カンシメさんと当時の担当マネジャー、ディディ・ムカワ・ムギシャ(Didi Muchwa Mugisha)氏は昨年11月、逮捕された。ムギシャ氏は罪を認めて20万ウガンダシリング(約9000円)の罰金を払ったが、カンシメさんは無罪を主張し、保釈金が準備できるまで5週間にわたって身柄を拘束された。