【10月12日 AFP】ルーマニアのタクシー運転手ボグダン・ガバネスク(Bogdan Gavanescu)さん(43)は首都ブカレストの病院のベッドで、2か月に及んだ新型コロナウイルスとの闘いを「地獄にいた」と振り返る。

 ガバネスクさんは感染するまで、新型コロナの存在を「信じていなかった」。

 ルーマニアは欧州連合(EU)最貧国の一つで、ワクチン接種も進んでいない。現在「破滅的な」流行の第4波に見舞われており、死者が急増している。

 報道やソーシャルメディアの投稿によると、ブカレストと北東部ヤシ(Iasi)の複数の病院では、救急車が列を成し病床に空きが出るのを待っている。多くの場合、集中治療室(ICU)に空きが出るのは、患者が亡くなった時だけだ。

 人口約1900万人の同国の1日当たりの新規感染者は7日、1万4457人に上った。また、8日公表の統計によると、1日当たりの死者数は385人と、新型コロナの流行開始以来最多となった。

 同国のワクチン接種プログラムの代表バレリウ・ゲオルギタ(Valeriu Gheorghita)氏は、昨年3月に流行の第1波に見舞われたイタリア北部で医療が逼迫(ひっぱく)したことを引き合いに出し「われわれは既にイタリアと同じ道を歩んでいると懸念している」と述べた。

 感染者数は今月後半さらに増えると予測されており、医療機関は「不急の」手術と入院患者の受け入れ延期を要請されている。

 ルーマニアではワクチン接種が進んでおらず、これまでに接種を完了したのは対象者の約3分の1にとどまっている。

 西部ティミショアラ(Timisoara)の病院の医師は「われわれ全員が代償を払っている」と語った。

 社会学者らはワクチン接種率が低いことについて、ソーシャルメディアで拡散されている陰謀論に加え、市民の政治不信が背景にあると指摘している。 (c)AFP/Mihaela RODINA / Ionut IORDACHESCU