■侵入種

 ここ数年、外来種もまた海底の生態系にとって脅威の一つになっている。400キロ以上に及ぶアルバニアの海岸には、多くの外来種が住み着いている。

 中でも特筆すべきは、1990年代にオーストラリアから移入された「カウレルパ・シリンドラセア」というイワヅタ属の一種で、生物多様性に不可欠な水中植物ポシドニアの群生を破壊している。

 ティラナ大学(Tirana University)のサイミール・ベツィライ(Sajmir Beqiraj)教授によると、「地中海のできもの」とあだ名されるこの外来種はすでにアルバニア全土の海岸で群生している。

「他の侵入種同様、この水草も在来種と比べて非常に強く、海洋の動植物相を劣化させ、生物多様性を大きく損ねます」と語る。

 北部沿岸のカルメット(Kallmet)では、2メートル潜れば、この外来種の群生が見られるという。

■「まるで新型コロナウイルス」

 専門家はアルバニアの海中で計40種の動植物侵入種を確認している。例えば紅海(Red Sea)由来の魚であるアイゴ。餌になる藻場を食べ尽くす。

 科学者はこれを地中海やアドリア海周辺諸国に共通の現象として、各国に共同で対処するよう促している。

「力を合わせ、今すぐ解決法を探しだすべきです」とブロラ在住の生物多様性専門家ネツィプ・イソロカイ(Nexhip Hysolokaj)氏は進言する。

 ブロラで25年以上漁業を営むバーツィ・ドゥルミッチャイ(Baci Dyrmishaj)さんは、この問題は国境など関係なく広がっている、だから対策も国境を超えて行う必要があると言う。

 漁網を破って、取った魚を襲う外来のワタリガニが急速に増殖していると嘆く。「まるで新型コロナウイルスです」と苦笑い。「大国が一緒になってワクチンをつくった。われわれも地球のために同じようにしなければいけません。国境は守ってくれません」 (c)AFP/Briseida MEMA