【9月25日 AFP】米人権団体「米国自由人権協会(ACLU)」が故ルース・ベイダー・ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg)元米最高裁判事の妊娠中絶に関する発言を引用する際、女性を指す代名詞をノンバイナリー(自らを男性と女性のどちらでもないと認識する考え方)の人々を指す代名詞に改変し、物議を醸している。

 ACLUはギンズバーグ氏の死から1年を迎えた18日、リベラル派でフェミニズム運動の象徴だったギンズバーグ氏は「妊娠中絶と男女平等の擁護者」だったとツイッター(Twitter)に投稿した。

 ツイートには、1993年の上院指名承認公聴会におけるギンズバーグ氏の発言を一部改変したものが添えられていた。「子どもを産むかどうかの決断は、人の生涯の中心であり、その人の幸福と尊厳に関わるものだ…政府が人々のためにその決定を管理すると、自身の決定に責任を負う一人前の大人ではないものとして人々が扱われることになる」

 ギンズバーグ氏の実際の発言は「子どもを産むかどうかの決断は、女性の生涯の中心であり、彼女の幸福と尊厳に関わるものだ…政府が彼女のためにその決定を管理すると、彼女自身の決定に責任を負う一人前の大人ではないものとして彼女が扱われることになる」だった。

 ACLUは「woman」、「she」、「her」をそれぞれ「person」、「they」、「their」に置き換えた。中絶を望む可能性のあるトランスジェンダー男性やノンバイナリーの人を考慮して、よりインクルーシブ(包摂的)に発信する意図があったとみられる。

 この改変は右派を中心とする一部のツイッターユーザーの怒りを買った。

 保守系団体「自由防衛同盟(Alliance Defending Freedom)」のグレッグ・スコット(Greg Scott)氏は「ACLUは文字通り女性を消している」と記した。

 ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)のジョナサン・ターリー(Jonathan Turley)教授(法学)は、「ギンズバーグ氏でも、このような差別に敏感であるが故の修正主義には我慢がならないのではないか」と述べ、「女性」という言葉を侮辱的とみなす考えと、歴史的文書は原文のまま読むべきという考えは両立すると主張した。

 元チェスチャンピオンのジェニファー・シャハード(Jennifer Shahade)氏は、「インクルーシブな言葉は重要だが、生殖権に関する議論から『女性』という言葉を消すのは好ましくない」と指摘した。

 一方、トランスジェンダーの活動家シャーロット・クライマー(Charlotte Clymer)氏は、ACLUの改変を擁護。「トランス男性やノンバイナリーの人々も妊娠中絶へのアクセスを必要としており、中絶へのアクセスに関する表現は常にそれを反映していなければならない」とツイートした。(c)AFP