【10月2日 AFP】チュニジアの首都チュニス中心部で、植民地時代のアールデコやアールヌーボー様式の老朽化した建物が、取り壊しの危機に直面している。文化遺産保護への無理解と不動産開発が背景にある。

 19世紀から20世紀にかけてのフランスの植民地時代に、伝統的なアラブの旧市街のすぐ外側に建てられたこうした建物は、街の「近代化」の象徴だった。

 最初に住んだのは、主にフランスからやってきた人々やユダヤ系チュニジア人だ。その多くは、1956年のチュニジア独立後と、さらに1967年の第3次中東戦争(Six-Day War)後に退去した。

 イタリア人とフランス人の建築家や起業家が手掛けた建物は植民地時代を思い起こさせるが「チュニスの中心部を構成している欧州風の新市街抜きでは、旧市街について語れません」と、ある建築家は言う。

 建築遺産であるはずの建物の中には、住人が手を入れて特徴的な様式を変えてしまったものや、不法占拠したもの、ごみ捨て場と化しているものもある。不動産開発の業者から退去を迫られているテナントもいる。

 地元の団体は、歴史的な建築景観を保護する計画を求めている。

 文化遺産を扱う政府機関の責任者、アメル・ズリビ(Amel Zribi)氏は、「集合記憶」の一部である場所をないがしろにするのは一種の「犯罪」だと主張する。

 だが現在、チュニジアは深刻な経済的・政治的危機に直面しており、建築遺産保護の先行きは暗い。(c)AFP/Najeh MOUELHI