ラボ生まれのタンパク質でペットフードに変革を 米新興企業のエコな挑戦
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■ナッツの風味にほのかなチーズの香り
ケルマン氏の愛犬ランプルズも、ボンド社のペットフードを気に入っているようだ。AFPの記者がサンプルを試すと、ナッツの風味に加えパルメザンチーズのほのかな香りがした。
しかし、同社がペットフード業界の主流になるには、多くのハードルがある。
第一は価格。環境を大事にする犬の飼い主でも、ドッグフードへの出費となると財布のひもを締める。
発酵タンクを導入することで、同社はタンパク質のコストを1キロ当たり100ドル(約1万1000円)から5ドル(約550円)まで下げることができた。さらに価格を下げられると技術責任者は言う。
しかし、認可当局にこのペットフードが安全で有望であることを納得させるのに、少なくともあと2年はテストと評価が必要となりそうだ。ボンド社は2023年の後半までに、同社のタンパク質をペットフード製造業者向けに販売し始めたいという。
決定的な問題は、ラボ生まれのペットフードが、ペットの健康や幸せを願う飼い主に受け入れられるかどうかだ。
ボンド社からそう遠くない公園にいた犬の飼い主は、興味を示したが、慎重でもあった。
「私なら自分の犬に本物の肉のタンパク質を与えたい。地球を害さない範囲で」と、オーストラリアンシェパード2匹を連れたロシェル・ローリー(Rochelle Loughry)さんは語る。
「理屈の上では正しい」とジェイソン・アッカーマン(Jason Ackermann)さん。「しかし、長い目でみて、得られる恩恵が本物の肉と同じかどうか確かめる必要がある」と指摘した。
ペットフードに含まれる肉は、しばしば激しい論争を引き起こしている。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)環境研究所のグレッグ・オーキン(Greg Okin)教授は、肉食のペットが大量の二酸化炭素を排出するという研究を発表し、保守派と動物愛護活動家の両サイドから批判を受けた。これは、ケルマン氏を起業に向かわせる一因となった研究だ。
「私が『自分の猫や犬を殺せ』とか『餌をやるな』とかいった考えを持っていると思われていたようです。私は全くそんなことは言っていないのですが」とオーキン教授。「たくさんヘイト(憎悪)を浴びました」と語った。(c)AFP/Julie JAMMOT