【9月27日 東方新報】中国で8月に運転支援機能を持った自動車が衝突し、ドライバーが死亡した事故がその後も波紋を広げている。

 中国の電気自動車メーカー・上海蔚来汽車(NIO)のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ES8」が8月12日、福建省(Fujian)の高速道路で衝突事故を起こし、運転していた31歳の著名実業家が死亡した。ドライバーはNIO独自のナビゲーション補助機能「NOP(Navigate on Pilot)」を稼働して走っていた。

 このニュースが流れると、市民の間では「自動運転の車が事故を起こした」と動揺が広がった。NIO無人運転システムエンジニアリング部門責任者の章健勇(Zhang Jianyong)氏は「NOPはあくまで運転支援機能であり、自動運転と同一視してはならない」と強調した。だが、NIOはそれまで広告に「自動」という言葉を使用しており、「ユーザーに誤解を与えた」と非難を浴びた。

 ところが8月18日、約500人のNIOユーザーが「私たちはNOPが自動走行システムでなく運転支援機能であることを知っている」と共同声明を発表。「NIOの宣伝はユーザーを混乱させたり誤解させたりするものではない」と擁護した。これに対し、別のグループが「何をもってNIOユーザーの代表を名乗るのか」と批判し、「NIOの宣伝では実際、『補助』という言葉は削除され、『自動』が強調されていた」と主張。賛同者は数千人となっている。

 国際的な自動車技術者協会(SAE)の自動運転基準では、レベル1とレベル2は「運転支援」に属し、レベル4とレベル5が「自動運転」と見なされる。中国工業情報化省が2020年3月に発表した国家規格もおおむね同じ区分となっている。「運転支援」は自動運転には当たらないが、競争を繰り広げるメーカー側は、さも自動運転が実現したかのようにユーザーに誤解を与えてきた面がある。死亡事故発生後、NIOのライバルメーカーも「自動」の文字を削り、「運転支援」と強調するようになった。

 全国乗用車市場情報連合会の崔東樹(Cui Dongshu)事務局長は「メーカーは今後、運転支援を自動運転と誇張することなく、ユーザーに詳しく説明しなければならない」と呼びかけている。

 自動運転の実現には正確な車両位置や車間距離を測るため、人工衛星を使った詳細な情報が不可欠だ。中国では昨年完成した独自の衛星測位システム「北斗(Beidou)」ネットワークと中国メーカーの自動運転車両をセットにして拡大していきたい思惑がある。そんな時に発生した今回の死亡事故。中国衛星ナビゲーション測位協会の李冬航(Li Donghang)北斗時空技術研究所長は9月16日に湖南省(Hunan)で行われたシンポジウムで、「北斗は自動運転の課題を単独で解決するものではない。現在の運転レベルでもレベル4が将来実現した段階でも、複数のセンサー技術が必要となる」と説明。自動運転技術やそれを支えるネットワークへの不安が国民の間で高まらないよう躍起となっている。(c)東方新報/AFPBB News