ケニアのフライフィッシング、植民地時代の娯楽から一大産業に
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【9月27日 AFP】ジョン・ヌガイ・モーゼス(John Ngaii Moses)さん(60)は、きびきびした動きで小さなフライ(毛針)をライン(釣り糸)に結び付けると、岩から岩に飛び移り、川を目がけて投げた。
「暗闇でもフライを結べる」とモーゼスさんは笑いながら話した。ひゅんと振ったラインが優雅な弧を描き、手付かずの自然が残っている川に伸びていく。
モーゼスさんのようにフライフィッシングを楽しむ地元住民は、まだ珍しい。趣味として釣りをする人は少なく、フライフィッシングそのものもあまり理解されていない。植民地時代の名残として敬遠する人もいる。
それでも、フライフィッシングの世界でケニアは重要な地位を占めている。
ケニアには、アフリカ最古のフィッシングクラブの一つがあり、国内で手作業で作られる疑似餌は、何十年も前からノルウェーやニュージーランドの釣り人に愛用されてきた。
1900年代初期に英国人がマスを移入した高地の河川や湖には、世界中から釣り人が訪れる。
魚釣りをするためにケニアを訪れる人は、サバンナのライオンやヒョウ目当ての観光客ほど多くはないが、冒険好きの釣り人には、サファリツアーに引けを取らない体験が待っている。
首都ナイロビから車でわずか2時間。アバーディア山脈(Aberdare Range)からマシオヤ川(Mathioya River)が流れ落ちる辺りは絶好の釣り場だ。クロサイやゾウが生息している一帯には、自然がそのまま残されている。
「考えてみてください。午前中は釣り。午後は野生動物を撮影。こんなことができる場所、他にありませんよ」と、マシオヤ川を望むリゾート施設のオーナー、ザック・ギシェーン(Zac Gichane)さんは言う。
フライフィッシングは世界的な産業で、ケニアにとっても好機だとギシェーンさんは言う。
「ここは神の園です。ナイロビから2時間で、澄み切った川に平和な村、豊かな緑。可能性は無限です」