【9月10日 AFP】8日に投票が行われたモロッコ総選挙で、王党派とされる複数政党が躍進し、長年第1党だったイスラム穏健派の正義発展党(PJD)が大敗した。9日の開票速報で明らかになった。

 アブデルワフィ・ラフティト(Abdelouafi Laftit)内相は報道陣に対し、連立政権を10年間率いたPJDが、上院で125議席からわずか12議席にまで議席を減らしたと述べた。

 これを受けPJDは、現党首のサアド・ディン・オトマニ(Saad Dine Othmani)首相はじめ指導部が同日退陣したと発表した。できるだけ早期に臨時議会を招集する方針。

 PJDの主要なライバル政党である独立国民連合(RNI)は97議席、真正と現代党(PAM)は82議席だった。モロッコ最古の政党である中道右派イスティクラル党(Istiqlal)は、32議席を積み増して78議席と復活を果たした。

 RNIは連立政権の一角を成す少数政党で、王室と親しいとされる富豪実業家のアジズ・アハヌッシュ(Aziz Akhannouch)氏が党首を務める。また、主要野党のPAMは、2008年に同党を創設したフアド・アリ・ヒマ(Fouad Ali El Himma)氏が王室顧問を務めている。

 政治学者のイスマイル・ハムディ(Ismail Hammoudi)氏はPJDの敗因について、元指導者アブデルイラーフ・ベンキーラーン(Abdelilah Benkirane)氏が党首の座を追われた後の方向性をめぐる党内対立を挙げた。ハムディ氏によると党の宗教部門さえも、自党への投票を呼び掛けなかった。

 また評論家のムスタファ・セヒミ(Mustapha Sehimi)氏は、オトマニ首相の姿勢が妥協的とみなされたことが、PJDの立場を大きく弱めたと語った。

 王国のモロッコは、2011年に新憲法を制定。国王の権限の多くは議会や政府に委譲された。しかし、いずれの政党が政権の座に就くかにかかわらず、国王モハメド6世(King Mohammed VI)が重要な決定を主導している。 (c)AFP/Kaouthar Oudrhiri and Philippe Agret