【9月16日 AFP】アフガニスタンの首都カブールに迷路のように広がるコンクリート防爆壁。オミド・シャリフィ(Omaid Sharifi)氏(34)率いるアート集団は7年かけて、これを色鮮やかな壁画に作り替えた。ところがそこにやって来たのが、イスラム主義組織タリバン(Taliban)だった。

 タリバンがカブールを制圧して数週間のうちに、ストリートアート作品の多くは塗りつぶされ、殺風景なプロパガンダのスローガンに置き替えられた。タリバンの厳格な価値観が再びこの国に押し付けられている。

 シャリフィ氏らが創設した壁画集団「アートローズ(ArtLords)」は2014年以降、国内各地で2200点以上の壁画を手掛けた。彼らの芸術作品を白いペンキで塗りつぶしていく作業員の姿は、同氏にとって不吉な前兆だ。

「私の頭に浮かんだのは、(タリバンが)この街を『カファン』で覆っていくイメージです」と、シャリフィ氏はアラブ首長国連邦(UAE)のアフガン難民収容施設から電話インタビューで語った。カファンは、イスラム教徒の埋葬で遺体を覆う白い布を指す。

 だが、たとえタリバンが作品を消し去っても、また身の安全のために避難を余儀なくされている状態でも、シャリフィ氏は自らの運動を続けると語った。

「私たちは黙ってはいません」とシャリフィ氏。「世界中に私たちの声を必ず届けます。タリバンに毎日、屈辱を味わわせてやります」

 消された壁画の一つは、昨年、米国のザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)アフガン和平担当特別代表とタリバンの共同創立者アブドル・ガニ・バラダル(Abdul Ghani Baradar)師が、アフガン駐留米軍の完全撤退をめぐる合意に署名した後、握手する絵だった。

 アートローズは作品を通して、平和と社会正義、説明責任を求める運動を展開している。彼らの壁画はアフガンの英雄をたたえ、暴力の代わりに対話を呼び掛け、女性の権利向上を要求してきた。

 アートローズのメンバーは殺害の脅迫をものともしなかった。イスラム過激派からは背教者の烙印(らくいん)を押されている。