【9月7日 AFP】ロシア第2の都市サンクトペテルブルク(St. Petersburg)で行われる選挙の投票時に混乱が生じる可能性がある──候補者3人全員が同姓同名で、容姿も不気味なほど似ているからだ。

 リベラル系野党「ヤブロコ(Yabloko)」幹部で現職のボリス・ビシュネフスキー(Boris Vishnevsky)氏(65)は、今月行われるサンクトペテルブルク市議会議員選で、同姓同名で容姿もそっくりな2人と対決することになった。3人とも頭がはげていて、白髪交じりのひげをたくわえている。

 ビシュネフスキー氏は、「これは政治的な不正行為だ」とAFPに語った。「2人が立候補したのは、当選するためでも、基本政策の大綱を示すためでもない。有権者を混乱させるためだ。そのために名前だけでなく、容姿まで変えた」

 今月17~19日、ロシアでは下院選など数十の選挙が実施されるが、著名な反体制派はほぼ全員が立候補を禁止されている。

 同国では、有力候補と同じような名前の候補を立てて票を奪う策略がよく用いられており、ビシュネフスキー氏は、こうした妨害候補と対決することになるかもしれないことは覚悟していた。

 それでも、公式選挙ポスターの見本を見てあぜんとした。自身と、そっくりな2人の「ボリス・ビシュネフスキー」の写真が並んでいたからだ。

 ビシュネフスキー氏は同姓同名候補の一人の正体について、支持率が低迷している政権与党「統一ロシア(United Russia)」に所属するビクトル・ブイコフ(Viktor Bykov)氏だと主張した。「ブイコフ氏は『ボリス・ビシュネフスキー』になる前、ひげを生やしておらず、見た目が違っていた」

 ビシュネフスキー氏が寄稿する独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)によると、もう一人の同姓同名候補の正体はアレクセイ・シメリョフ(Alexei Shmelev)氏で、選挙前に改名したという。

 AFPは同姓同名候補2人と統一ロシアのサンクトペテルブルク支部にコメントを求めたが、いずれからも回答は得られていない。

 ビシュネフスキー氏は5日、公式選挙ポスターの写真をツイッター(Twitter)に投稿。6日には正式に苦情を申し立て、中央選挙管理委員会に問題の調査を求めるとともに、ポスターの他2人の写真は加工されたものだと訴えた。

 ブイコフ氏の以前の公式写真には、髪の生え際に後退の兆候がほとんどない、はるかに若い男性が写っていた。

 中央選挙管理委員会のエラ・パンフィロワ(Ella Pamfilova)委員長は6日、この状況は「恥ずべき」で「有権者をばかにしている」と述べる一方、ほとんど打つ手がないことをほのめかした。

 パンフィロワ氏はラジオ局コメルサントFM(Kommersant FM)で、ロシアの選挙法は「非常に寛大」で、ボリス・ビシュネフスキーという名前の候補者全員が出馬できると述べた。(c)AFP/Marina KORENEVA