【9月4日 東方新報】中国で大企業や男性スターに絡む性暴力被害の訴えが相次いでいる。インターネット上では告発した女性を支持する投稿が多く、中国版「#Me Too」運動のような盛り上がりを見せている。

「上司の男に強引に出張を命じられ、取引先との接待で飲酒を強要された。私が泥酔すると取引先の男にわいせつな行為をされ、さらにホテルの部屋で上司に暴行された」——8月7日夜、中国の電子商取引(EC)最大手・阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の女性社員が訴えた文章がネット上に一気に拡散した。

 告発によると、性的被害を受けたのは7月27日夜、出張先の山東省(Shandong)済南市(Jinan)だった。彼女は翌日に警察に被害届を出し、社内の管理職に相談。しかし何日たっても事態は進展せず、管理職から「上司の処分はしない。あなたの名誉のためだ」と告げられた。許せない女性が会社内のチャットに告発文を発表すると、内容がネットに広がった。

 8月8日朝、アリババの経営責任者(CEO)の張勇(Daniel Zhang)氏は社の対応に問題があったと謝罪。翌9日には女性を暴行したとされる上司を「永久追放」し、もみ消しを図った管理職を処分した発表した。9、10日のわずか2日間で、中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」では関連の投稿は5億回以上閲覧された。済南市の警察は25日に取引先の男を強制わいせつ容疑で逮捕し、問題の上司も同容疑で取り調べていると公表した。

 アリババ事件と前後して大きな話題となったのが、中国系カナダ人の人気ポップスター、呉亦凡(クリス・ウー)容疑者(30)が強姦(ごうかん)容疑で先月16日に逮捕された事件だ。ウー容疑者は韓国の男性アイドルグループ「EXO(エクソ)」で活躍し、ソロになった後は中国で活動。ポルシェ(Porsche)やルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)など十数社と広告契約を結ぶ大スターだったが、北京の中国伝媒大学(Communication University of China)の女子学生(18)が7月、「17歳の時にミュージックビデオの面接と称して自宅に呼ばれ、酒を飲まされて暴行を受けた。他にも未成年を含む7人の女性が被害を受けた」とネットで告発。ウー容疑者は容疑を否定し、所属事務所は女性に法的措置を講じるとしたが、7月31日に警察に拘束された。5000万人のフォロワーがいる微博のページは削除され、音楽ストリーミングサイトからも楽曲が削除された。8月16日に正式に逮捕されたニュースは微博のトップトレンドに浮上し、逮捕を支持するコメントであふれ返った。

 世論の高まりを受けて、中国共産党の汚職などの監督機関・中央規律検査委員会は、ビジネス上の飲酒に関わる「不快な文化」を非難。飲酒を強制する「暗黙のルール」をなくすよう呼びかけた。国営中国中央テレビ(CCTV)も「女性が性的暴行に遭遇した場合、どうやって証拠を集めるか」と報道したが、ネット上では「どうやって性的暴行を起こさないかが大事。教育すべきは男の方だ」という批判も出た。微博では今も「醜い飲酒文化をなくせ」「職場の女性はセクハラをどのように防ぐべきか」と話題に。積もり積もった女性の怒りが噴出している。(c)東方新報/AFPBB News