■「戦時の協力者に約束したことを守って」

 北大西洋条約機構(NATO)軍の通訳を務め、ジョンの愛称で呼ばれていた男性は、置き去りにされたことへの苦い思いについて話した。

 仕事では主にルーマニア軍に付いていた。ルーマニアはアフガニスタンに長期的に駐留し、最盛期には1800人の兵を派遣していたが、国外に退避させたアフガン人はわずか5人だ。

 タリバンは全国民に対する恩赦を発表したが、ジョンさんがAFPに送ってきたメッセージによると、武装した戦闘員が「家々をしらみつぶしに捜索し、外国軍の通訳を捜している」という。

 周辺での混乱や自爆攻撃などでカブールの空港に近づけないジョンさんは、頻繁に居場所を変えながら望みをつないでいる。

 ジョンさんは、こう懇願した。「戦時の協力者に約束したことをきちんと守って、私たちをアフガニスタンから避難させてください」

■オーストリアで同胞のために訴えるアフガン人

 オーストリアの首都ウィーンでも、アフガニスタン系のシマ・ミルザイ(Sima Mirzai)さん(26)が、祖国に残された同胞に代わってオーストリア人の良心に訴えかけている。

 児童精神科医の免許を取得したばかりのミルザイさんは、6歳からオーストリアで暮らしている。家族は、長い間迫害を受けてきたイスラム教シーア派(Shiite)の少数民族ハザラ人(Hazara)で、タリバンが前回政権を握っていた1990年代にアフガニスタンから逃れた。

 ミルザイさんは現在、女性のいとこ2人をカブールから脱出させようとしている。

「いとこたちは潜伏中で、すごく危険な状況にあります」とウィーンのカフェでAFPに語った。「タリバンに追われているんです。2人は米国のNGOの事務所で働いていたのですが、その情報をタリバンに見つかってしまいました」

 ミルザイさんは、オーストリアの政治家らの態度は「非人道的で恥ずべき」ものだと非難した。議員らからは、これ以上アフガン難民を受け入れるなという声が上がっている。

 現在オーストリアには4万人のアフガン難民が住み、国民1人当たりの難民受け入れ数は欧州連合(EU)域内最多だ。

 同国では最近、13歳の少女が亡命を希望するアフガン人グループに殺害されたとされる事件が起こり、難民問題をめぐる議論が紛糾している。

「(難民の)多くは社会に溶け込み、犯罪者ではありません」とミルザイさんは言う。「難民を歓迎すれば、社会は豊かになると思います」 (c)AFP/Anne BEADE with Ionut IORDACHESCU in Bucharest