【9月2日 AFP】米テキサス州で1日、妊娠6週以降の人工中絶を禁止する法律が施行された。6週目では、まだ妊娠に気付かない女性も多い。ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は、憲法で保障されている権利を「はなはだしく侵害」するものだとして同法を批判した。

 同法は今年5月、グレッグ・アボット(Greg Abbott)州知事(共和党)による法案署名により成立。胎児の心拍が確認される時期である妊娠6週目以降の中絶を禁止するため、「心拍法」とも呼ばれている。

 レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠も例外とはならず、テキサスは中絶手術を受けることが全米で最も困難な州となる。同様の法案は、共和党が強い10以上の保守州でも可決されていたが、いずれも裁判所により差し止められ、施行には至っていなかった。

 テキサスの新法が他州の法律と違う点として、検察や医療従事者をはじめとする州関係者だけでなく、一般市民が法順守を求めて提訴できることがある。市民には、中絶を行う医師や協力者を通報することが奨励される。

 バイデン氏は声明で、1973年に連邦最高裁が女性の中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド(Roe v. Wade)判決」に言及し、「この極端なテキサスの法律は、ロー対ウェイドで確立し、半世紀近くにわたり先例として維持されてきた憲法上の権利をはなはだしく侵害するものだ」と指摘。自身の政権は同判決で定められた権利を全力で守ると宣言した。

 人権団体などは先月30日、連邦最高裁に対し同法の施行差し止めを求める緊急の申し立てを行っていたが、同裁は施行日までに判断を示さなかった。ただし、今後申し立てが認められる可能性はある。(c)AFP