【9月6日 AFP】ヘイトスピーチで有罪判決を受けたスウェーデン人アーティスト、ダン・パーク(Dan Park)氏らの作品の展覧会が8月下旬、ポーランドの首都ワルシャワで開幕したことに対し、ユダヤ人団体が抗議書簡を公開した。

「政治的芸術(Political Art)」と題する展覧会に出品されたパーク氏の作品の一つは、2011年にノルウェーで爆破・銃乱射事件を起こして計77人を殺害した極右過激派のアンネシュ・ベーリング・ブレイビク(Anders Behring Breivik)受刑者を、アパレルブランド「ラコステ(Lacoste)」のファッションモデルとして描いている。

 書簡にはポーランドのユダヤ教指導者のトップや、ポーランド・ユダヤ人博物館(POLIN)のジグムント・ステピンスキ(Zygmunt Stepinski)館長らが署名している。

 この中ではユダヤ人団体は、「憎悪、不寛容、敵意を広める人々への支援には同意できない」とし、「ナチス・ドイツ(Nazi)の政策によって600万人の国民が殺されたポーランドにおいて、ダン・パークのようなクリエーターの活動は全ポーランド人の感情を侮辱するものだ」と批判した。

 極右活動家の間で人気のあるパーク氏は、挑発的な言動で何度も有罪判決を受けている。1996年にはかぎ十字やハイル・ヒトラー、ナチス親衛隊(SS)といった文字や、SSが使った骨とどくろを模した紋章「トーテンコープフ(Totenkopf)」をあしらったボンバージャケットを着用し、有罪となった。これについて同氏は法廷で、ナチズムに共感したからではなく、挑発のためだったと語った。

 主催者は今回の展覧会について、言論の自由をたたえ、ネットで不快な行動を糾弾する「キャンセル・カルチャー」の犠牲になったアーティストに発表の場を提供したものだと主張している。

 開催場所となっているウジャドウスキー城現代美術センター(Ujazdowski Castle Centre for Contemporary Art)のピオトル・ベルナトウィチ(Piotr Bernatowicz)館長は2019年、ポーランドの右派与党「法と正義(PiS)」により任命された。

 この人事をめぐっては、政府が自らの保守的な政策に文化施設を取り込もうとしているとの批判を浴びた。

 今回の展覧会には、2007年にイスラム教の預言者ムハンマド(Prohet Mohammad)を描いて物議を醸したスウェーデン人漫画家のラーシュ・ビルクス(Lars Vilks)氏や、ウガンダの貧しい村人340人に金銭を払い、自分の名前に変更させたデンマーク人アーティスト、クリスティアン・フォン・ホーンスレス(Kristian von Hornsleth)氏ら28人のアーティストが出展している。(c)AFP