【9月4日 AFP】アラビア海(Arabian Sea)に面するインド西海岸のゴア(Goa)で、蒸留酒フェニの製造が始まったのは約500年前のこと。フェニ造りに携わる新世代の人々は、この地酒が世界に広まることを願いつつ、まずはインドの人々に気に入ってもらうことを目指している。

 フェニは通常、カシューの木になるカシューアップルやココヤシの樹液から造られ、アルコール度数が高い。ムンバイ(旧ボンベイ)の南に位置し、かつてポルトガルの植民地だったゴアでは、外国ブランド酒の普及により、ここ数十年でフェニの人気がなくなってしまった。

 フェニを製造・販売する「カズロ(Cazulo)」のハンセル・バズ(Hansel Vaz)氏(38)は、「伝統的な知識を現代の人々に伝えたかったのです」と語る。数世紀にわたり受け継がれてきた技術でフェニを造り、においの抑えられた口当たりの良いカクテルを考案している。

 フェニの生産時期はカシューアップルの収穫期に限られる。熟して落ちた果実だけが、フェニ造りに用いられるという習わしがある。

 フェニについての著作があるビウラ・ペレイラ(Biula Pereira)氏によると、16世紀にポルトガル人がカシューナッツを持ち込んでから造られるようになったフェニは、ゴアの社会で歴史的に重要な役割を果たしてきた。

「フェニは、さまざまな機会や通過儀礼に使われました。風邪や熱に効く薬としての役割もありました」とペレイラ氏はAFPに語った。

 バズ氏の祖父は毎日フェニを飲んでいたというが、21世紀を迎える頃には、若い世代に地酒は受け入れられなくなっていた。海外で地質学者として働いていたバズ氏は、ジンやメスカル(メキシコ特産の蒸留酒)が世界中で飲まれているのを目にして、家業に活気を取り戻し、「フェニをクールにしたい」と強く感じたという。

「自分たちの文化的なアイデンティティーを表現するためです」とバズ。ゴア産の、厳選されたフェニの市場をつくりたいと意気込みを語った。(c)AFP/Ammu KANNAMPILLY