【8月25日 AFP】17世紀の米国で行われた「セーラム(Salem)魔女裁判」で有罪とされた女性が、地元の中学生の働き掛けで恩赦を与えられる見通しとなった。

 植民地時代のマサチューセッツ(Massachusetts)では、魔女に対する集団パニックが起きていた。そうした中でエリザベス・ジョンソン・ジュニア(Elizabeth Johnson Jr.)さんは、1693年に死刑判決を言い渡された。執行を猶予され、1740年代に70代後半で亡くなったが、魔女として有罪判決を受けた他の人々と異なり、いまだに無罪とされていない。

 セーラム近郊のノース・アンドオーバー・ミドルスクール(North Andover Middle School)8年生(13~14歳)の生徒らは、公民の授業でジョンソンさんが苦しめられた状況を知り、行動を起こすことに決めた。徹底的な調査を行い、一次資料を調べて、ジョンソンさんが標的にされた理由は、未婚であったこと、そして精神障害があったかもしれないことだと知った。

 教師のキャリー・ラピエール(Carrie LaPierre)さんはAFPに対し、「公民の入門授業は、アイデンティティー、価値観、固定観念、ディスカッションという考えに基づいて行っている」と説明した。「そうした観点からジョンソンさんの状況を見ることで、生徒たちは彼女の裁判を判断できる目を養い、共感を深めることができた」

 ジョンソンさんが恩赦を与えられていないことに納得できなかった生徒たちは、地元の議員たちに手紙を書き、州上院議員のダイアナ・ディゾリオ(Diana DiZoglio)氏がジョンソンさんの汚名をすすぐための法案をまとめるのに協力した。ジョンソンさんには、恩赦を働き掛ける直系の子孫はいない。

 ディゾリオ氏は先日、議会に法案を提出したが、他の議員から反対は出ないとみられている。

 1692~1693年、迷信に支配されていたマサチューセッツでは150人以上が魔女として告発された。ほとんどは女性で、ジョンソンさんの母親も含まれていた。

 ジョンソンさんを含む30人が有罪となり、うち19人が絞首刑にかけられた。ディゾリオ氏によると、マサチューセッツはその後、ジョンソンさん以外の29人に関しては正式に無罪とした。

 ディゾリオ氏はAFPに対し、「今こそ本件を清算し、エリザベス・ジョンソン・ジュニアさんの汚名をすすぐ時だ」と述べた。

 生徒たちは、議会に法案が提出されてから、そのつど最新の情報を受け取り、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)など、さまざまなメディアからの取材を楽しんでいる。

「この1年で多くの関心を集めた現代の出来事に比べると、大したことのないプロジェクトに見えるかもしれないが、子どもたちの努力で過去の過ちが正されたのだから、そのことを誇りに思ってほしい」とラピエールさんは語った。(c)AFP