【8月16日 AFP】「壮絶な」交尾期を終えるとストレスで雄が一斉に死んでしまうことで知られるオーストラリアの希少な有袋類アンテキヌスの一種が、壊滅的な山火事で数少ない生息地の一つを失いながらも生き延びていたことが分かった。研究者らが16日、明らかにした。

【研究結果】有袋類の雄が交尾で死ぬ理由、豪チームが解明

 2019年に豪東部クイーンズランド(Queensland)州の国立公園が山火事に見舞われた際、科学者らはアンテキヌスの一種で、8年前に公式認定されたばかりのシルバーヘッドアンテキヌスの将来を案じた。国内で判明しているシルバーヘッドアンテキヌスの生息地はわずか3か所しかなく、その一つがこの国立公園にあるためだ。

 研究を率いたクイーンズランド工科大学(Queensland University of Technology)のアンドルー・ベイカー(Andrew Baker)氏は、「焼失した生息地と被害を免れた生息地の両方で21匹を発見した。素晴らしいことだ。種の存続を意味する」と述べた。

 生息地の3分の1が焼失したことから、ベイカー氏は一匹も発見できないかもしれないと懸念していたという。

 シルバーヘッドアンテキヌスの雄は生来、危険に満ちた一生を送る。雄は2週間の激しい交尾期を終えると、その影響で1歳を迎える前に死ぬ。一方の雌も、3度目の繁殖期まで生きることはめったにない。

 ベイカー氏によると、雄の特大サイズの精巣から高濃度のテストステロンが分泌されると、ストレスホルモンのコルチゾールを抑制できなくなる。繁殖期に急増したコルチゾールが、雄の体をむしばむという。「雄は内出血に苦しみ、毛が抜けたり、失明したりすることもある。それでも雄は死ぬまで交尾するために、雌を探して徘徊(はいかい)する」

 ベイカー氏は、より多くの干ばつや火災を招く気候変動の影響が、シルバーヘッドアンテキヌスの将来に影を落としていると指摘している。(c)AFP